$あれも聴きたいこれも聴きたい 何といっても「夢のカリフォルニア」です。名曲中の名曲です。まだまだ日本が途上国だった時代、圧倒的な先進国アメリカの象徴だったカリフォルニアは、まさに夢でした。そのカリフォルニア幻想を体現する歌でした。

 この曲は、カリフォルニア生まれのミッシェルが、生まれて初めてニューヨークで雪を見てホームシックになった姿がヒントになって生まれたということです。ミッシェルとジョンのフィリップス夫妻の共作になる曲です。成り立ちからして、カリフォルニア賛歌ですね。

 ところで、この曲はもともと彼らがバックでコーラスをしていたバリー・マクガイアが歌いました。それを、プロデューサーのルー・アドラーの英断で、バリーの歌を消して、もう一人のメンバー、デニー・ドハーティに差し替えたのが、この録音です。一部消しきれないバリーの声が聴こえます。

 「彼らは金もなく、みすぼらしかった。だが、マイクに向かって声を出したとたん、4人の天使に変身した」とはルーさんの言葉です。見事に素晴らしいボーカル・ハーモニーが現前したわけですね。素晴らしいです。

 メンバー3人の名前を出しましたが、何といってもママス&パパスの象徴は名前を出していないもう一人の女性キャス・エリオットさんです。肝っ玉母さんのようなキャスは、面倒見もよくて当時の音楽シーンでは随分慕われていた人のようです。肥満ですら豊かさの象徴だった頃です。かっこよかったです。32歳で亡くなってしまうとは残念です。

 一方、もう一人の女性ミッシェルは、「いつでも天使になれる女性」と、恐ろしいことこの上ない形容のついている人です。彼女がデニー他と不倫をしたとかで、ジョンとそりが合わなくなり、わずか3年くらいでママス&パパスは解散してしまいます。男女二人ずつというバンドは長続きしませんね。

 これは、その「夢のカリフォルニア」を含む彼らのデビュー・アルバムです。チャート的には冒頭の「マンデー・マンデー」の方が売れて、全米1位を獲得しました。しかし、日本では圧倒的に「夢のカリフォルニア」だったということで、邦題は異論がなかったんでしょう。ちなみにアルバムも全米1位となり、ロング・セラーを記録しています。

 本作品は、カバー曲なども含まれていて、見事なコーラス・ワークを聴かせる作品になっています。ボーカルには、いろんな表情があって、たとえば2曲目の「ひたむきな恋」などは、B-52’sなどを思い出してしまいました。

 ジョン・フィリップスさんは、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンと並ぶ60年代最高のボーカル・アレンジャーだと言われることもあります。確かにボーカルは凄いです。ただ、やはり当時のフォークなので、全体にちょっと緩い感じがします。「夢のカリフォルニア」は大好きなんですがねえ。

(ルー・アドラーの言葉は中山康樹さんの「ビートルズから始まるロック名盤」からの孫引きです。)

If You Can Believe Your Eyes And Ears / The Mama's And The Papa's (1966 Dunhill)