$あれも聴きたいこれも聴きたい
 なんといっても「BOOM釈迦-楽」です。結果的に世界中で50を越えるコマーシャルに起用されたというこのキャッチーナパーティー・ソングは発表当時、英国ではMVがそれこそ毎日流されていました。持続力も凄いですが、瞬発力も凄かった。

 非白人の新人としては破格の25万ポンドでアイランド・レコードと契約したアパッチ・インディアンは、ファースト・アルバム「ノー・リザベーション」のヒットから間髪を入れずに「BOOM釈迦-楽」を発表し、これがトップ10ヒットしたことで一躍大ブレイクしました。

 このアルバムは「BOOM釈迦-楽」を収録したアパッチ・インディアンのセカンド・アルバムです。発表されたのは1995年と特大ヒットの恩恵を受けるには少し間が開いてしまいました。それでもタイトル曲と「ラガマフィン・ガール」のシングル・ヒットを生んでいます。

 アパッチ・インディアンの音楽は在英インド・コミュニティーのバングラ・ビートと、パンクなレゲエ・スタイルのラガマフィンをミックスしたスタイルで、バングラ・マフィンなどと呼ばれています。バングラは当時の英国で結構流行っていましたが、もちろんレゲエほどではありません。

 そのバランスには彼も苦労しているようで、「インドっぽい事をやると黒人からレゲエはどうしたんだと言われるし、レゲエっぽい事をやるとインド人からインドの要素はどこにあるんだと言われるし、皆を喜ばせる事は本当に難しい」と語っています。

 この作品では、ずいぶんレゲエ成分が濃いように思います。前作は同じくインド系のスワミがプロデュースしていましたが、本作はレゲエといえばどこにでも顔を出すスライ・アンド・ロビーが多くの曲でプロデュースを行っています。

 それにジャマイカから大物レゲエ・シンガーのフランキー・ポールや若手ルーツ・シンガーのヤミ・ボロが参加しています。それに「ジャー・リード・ザ・ウェイ」なんていうレゲエ・カルチャーへのリスペクトも忘れていません。いかにレゲエ成分が濃いことか。

 しかし、もちろんインドも忘れていません。バングラ・シーンの開拓者アーラープのメンバーも参加した「ボバ」などはインドの言葉で歌われるバングラ・スタイルですし、その混在ぶりがまるで違和感がないのが最高にかっこいいです。

 加えて見逃せないのがヒップホップの要素です。ここではヒップホップ・トラックを得意とする英国と米国のコンビ、ザ・プレスが5曲をプロデュースしています。冒頭のタイトル曲にはニューヨークからラッパー、ティム・ドッグが招かれて、ハードコアな歌を聴かせています。

 さらにこの当時英国の最先端だったジャングルを取り入れた「フー・セイ?」を加え、そこにほんの10数分でできたという「BOOM釈迦-楽」を加えて、アルバムとしての完成度も極めて高いです。一皮むけた堂々たるアルバムになりました。

 アパッチ人気は本国インドにも飛び火しています。ただし、国民的人気を得るにはまだ少し時間がかかりました。レゲエ寄りすぎたのでしょう。それはともかく、本作はインド系ミュージシャンの国際的ブレイクの金字塔として燦然と輝く名盤だといえます。

Edited on 2020/07/06

Make Way For The Indian / Apache Indian (1995 Island)