$あれも聴きたいこれも聴きたい インド映画のサントラです。このアルバムからは多くのヒットが生まれていますが、何といってもタイトル曲です。キャッチーなサビのメロディーは一度聴いたら忘れられませんし、いかにもヒップホップなビデオ・クリップも印象的です。

 このCDを買う際に、私はタイトルがよく分からなかったので、CD屋の店先で歌ってみました。店の親父は一発で分かってくれましたよ。音痴な私の歌でも一発で通じる、そんな曲です。アルバム自体も、ロング・セラーを記録しただけに、飽きのこない曲がつまっています。音楽監督はヒット・メーカーのプリタムです。

 映画のサントラではありますが、一曲入魂主義とでも言えばよいのか、一曲一曲がそれぞれ独立しています。大体、映画もサイコ・サスペンス・スリラーで、歌と踊りは一部を除いて、あまりストーリーとは関係ありません。

 特にタイトル曲は映画の途中で、映画とは全く無関係な映像とともに突然出てきます。まあスーパースターのアクシャイ・クマールが登場するという意味合いなのですが、私は見てて休憩かと思いました。

 各楽曲は無茶苦茶バラエティーに富んでいます。タイトル曲はヒップホップ仕立ての無国籍風メロディーですし、二曲目の「ラボーン・コ」はラテン風味のギターが入るバラードで、インドで大人気のイグレシアス親子が歌っていてもおかしくありません。カラオケで歌いたい名曲です。

 映画でヒロインが踊る古典舞踊にあわせて流れる曲はタブラ全開のもろインド古典音楽風ですし、踊りの大群が押し寄せてきそうな典型的なフィルム・ソングもあります。一聴すると、ベンガル語やヒンズー語で歌われるので、もちろんインドっぽく聴こえはするのですが、よく聴いてみるとどこがインドっぽいのか分からなくなってきます。

 基本的にはコンピューターを駆使してトラックを作って、ボーカルを乗っけていく形ですから、世界中にあまねく広がっているダンス音楽とあまり変わりませんし、そもそもインドっぽさって何だろう、なんて考えさせられます。

 ここでも歌手はプレイバック・シンガーたちですが、異色なのはタイトル曲を歌っているネーラジ・スリダールです。スウェーデンでボンベイ・バイキングスというバンドを組んでいた人で、インド風ヒップホップを見事に歌いこなしていて素晴らしいです。

 その他には、若手のKKやトゥルシ・クマールの活躍が目立ちます。特にKKは「サジュダ」、「アラー・ハーフィズ」、「ラボーン・コ」と3曲も歌っていて、いずれも彼の代表曲でしょう。ちなみに前二者のタイトルはウルドゥー語です。

 プリタムという人はよほど器用な人です。もともと音楽家になるとは思ってもみなかった彼は、CMの音楽作りから出発して、超売れっ子になりました。多作の人で、自分でもロック・バンドをやっていてアルバムを出すという話がありましたが、出したとは聞いていません。

 しかし、ここでロック・ファンの方にお知らせしなければなりません。ぜひ聴く比べて頂きたいのですが、このタイトル曲はロックのゴッド・ファーザー、ビル・ヘイリーの「オリエンタル・ロック」という曲に酷似しています。

 プリタムさんはパクリ疑惑の多い人でもあるんです。ただ、オリジナルはとてもヒットしそうにないヘロヘロの曲なのに対し、こちらは随分かっこよく仕上がっています。バックに流れる弦の音がインドを主張して、バックストリート・ボーイズ風ヒップホップと融合し、さらに中華風無国籍メロディーがなります。KAT-TUNに歌わせたいと思いました。

Bhool Bhulaiyaa / Pritam (2007 T Series)



ビル・ヘイリーです。聴き比べをどうぞ。