$あれも聴きたいこれも聴きたい 灯台です。アイスランドの人々はよほど灯台が好きだと見えます。私も海沿いの町で育ちましたから、灯台の魅力は分からないではありません。スポットライトやサーチライトの魅力を極限まで濃縮して、幽霊と紙一重のあの世感を交えた感覚でしょうか。

 アミーナはアイスランドの女性四人組です。アイスランドを代表するバンド、シガー・ロスとの係わりが深く、シガー・ロスのライブやレコーディングにはほぼ欠かせない存在となっています。一組夫婦だそうですし。

 このプロジェクトは、スリーブに記載されているところによると、初めて灯台で演奏した後、ある男の人が寄って来て、感想を述べたことに始まります。灯台の最上階に立っていると、下の方から音楽が上ってきて、まるで灯台が光ではなくて音楽を放射しているかのように、大海原に音楽が広がっていった。

 素晴らしい感想です。演奏者を感動させてしまう。ブロガーの目指す境地ですね。

 その後、彼女たちは2009年の夏、小さな場所で演奏するために書いた曲をもってアイスランド中を旅することに決めました。3年後に、それらの曲を録音することに決め、元の演奏の親密な感じを出すためにライブで録音した。それがこの作品です。

 彼女たちは自分たちを灯台になぞらえます。灯台は独りぼっちで立って、メッセージを大海原に放ち続けます。音楽家も、目的に届くあてもなく、誰が受け取って、どう使うか全くわからないのに、メッセージを放ち続ける。そういうことです。

 アートワークを含め、印刷されたメッセージが見事に音楽とシンクロしています。ミュージック・ソウのマジカルな響きや、木琴系統の打楽器類、シンセサイザーなどによる音数の少ない静謐なサウンドはもうそのまんまです。

 音楽が静かにまわりを照らしているのですが、アンビエントとは少し違う気がします。環境と溶け合うことがない。あくまでスポットな光です。心の中をサーチ・ライトが照らしていく。広大無辺な心象風景を光が経めぐる。そういう風情です。

 ただし、わずか22分程度という短さが惜しいです。ミニ・アルバムというよりもマキシ・シングルですよね、これでは。しかし、ひょっとすると2回続けて聴かれることを想定しているのかもしれません。ちょうどよい長さですし、続けて聴いても全く新鮮ですからね。

 こういう音楽を聴いていると一人でも生きていけそうな気になります。本当に美しい素晴らしい作品です。

The Lighthouse Project / Amiina (2013 Aminamusik)