$あれも聴きたいこれも聴きたい デュラン・デュランはチャラいバンドの代表格でした。ニュー・ロマンティックスと呼ばれた当時の人気バンドの中にあって、ひときわ王子様感が強かったですし、またアイドル的な人気も凄かった。私を含め、ニュー・ウェイブの「シリアスな」音楽に入れ込んでいた人々の間では揶揄の対象でした。

 しかし、デュラン・デュランのファンの英国人女性に、「そういうことを言うやつが一番うざい」と言われて反省したのもまた事実です。皮肉を言わせたら世界一の英国人ですから、当時は日本以上にとやかく言われていたそうで、本気で怒っていました。

 というわけで、デュラン・デュランに対するスタンスは右往左往しているのですけれども、そんな私たちでも、大たい彼らの楽曲はよく覚えているものです。ヒットもしましたし、悔しいですけれど、記憶に残るいい曲が多かったですからね。

 これはデュラン・デュランのデビュー作品です。久しぶりに聴いてみましたが、予想以上に面白かったです。ジャケットやPVのフリフリ・ブラウスには辟易しますが、こういうサウンドだったのかと再発見したような気分です。

 デュラン・デュランはイギリスのバーミンガムで結成されたバンドです。初期のメンバーの中には、のちに英国のスーパースター、ロビー・ウィリアムスのプロデューサーとして名を知られるスティーヴン・ダフィーもいたと言いますから、最初から大したバンドだったんですね。

 80年代初頭と言えば、ディスコ・ブームが終わって、クラブが認知され始めた頃、クラブ・ミュージックが蠢き始めた時期に当たります。デュラン・デュランはそんな時期に、自らの音楽を「ナイト・ミュージック」と呼んでいました。当時はクラブ・ミュージックという言い方がなかっただけで、同じ意味でしょう。まさに先駆者ですね。

 確かに、そのサウンドはクラブ・サウンドの先駆けになっています。このデビュー作ではその意図がよりあからさまです。ヒットしたデビュー・シングル「プラネット・アース」は私も大好きなのですが、ドナ・サマーというかジョルジョ・モロダーのような細かく刻むビートがまさにフロアを意識しています。

 全体にジョン・テイラーのベースとロジャー・テイラーのドラムは素晴らしいですね。まるでデジタル・ビートのようです。本当に人力ですよね。驚きます。ただ、中には「フレンズ・オブ・マイン」のように、まんまロキシー・ミュージックの「恋はドラッグ」みたいな曲もあるところが御一興です。

 アルバムはゴッドレー&クレームのPVで物議を醸す「グラビアの美少女」から始まります。この曲は全英5位のヒットを記録して、一躍彼らの名前を轟かすことになりました。当時はMTVの黎明期にあたります。彼らはそんなMTVの申し子だったんですね。

 次いで「プラネット・アース」が置かれ、次々にキャッチーな曲がならんでいきます。ソング・ライティングのセンスも高いのですが、まだファーストは素朴な感じがいたします。そして最後にはインストの「テルアビブ」が入ります。決してアイドル的ではない、ストリングスを導入した屈託のある曲です。

 今から振り返ると、現代につながるサウンドであることがよく分かります。女子供は正しかったということですね。

Duran Duran / Duran Duran (1981 EMI)