$あれも聴きたいこれも聴きたい 「ある日作成しよう」でRCサクセションというバンド名になった、と長い間信じてきましたが、どうやら違うんですね。でも、本人たちがテレビでそう言っていたのを見たような気がします。冗談だったんですね。まんまと引っかかりました。

 この作品は元フォークのRCがエレキ化して以降のシングル曲を集めたベスト盤です。まだまだ若かった私はこの「元フォーク」というところが引っかかって、彼らに偏見をもっていたものですから、あまり同時代には聴いていませんでした。

 そんな私の偏見を見事に打ち砕いたのは85年にロンドンとフィラデルフィアをメイン会場として行われたライブ・エイドでの忌野清志郎さんのパフォーマンスでした。説明が必要ですかね。ライブ・エイドは日本でもテレビ中継され、その合間に日本のアーティストもパフォーマンスを行ったんです。

 清志郎さんはRCではなくて、デンジャーというバンドでの出演でしたが、その♪馬鹿にされても働く大人しい人がいる♪のボーカルは圧巻でした。これは凄いじゃないかということで、過去の態度を悔い改め、悔悛の情を示すためにRCのベスト盤を買いました。それがこのアルバムに形を変えて我が家に鎮座しているわけです。

 ところで、私が子どもの頃には、日本語でロックできるかと真剣に議論されていたものです。それほど西洋と日本は遠かった。その議論に終止符を打ったのは忌野清志郎と桑田佳祐ではないでしょうか。以降、誰も疑問を持たなくなり、そういう議論はほとんどなくなりましたから。

 しかし、二人の日本語のロックへの乗せ方は対照的です。巻き舌の英語的な発音で日本語を載せていく桑田さんに対し、徹頭徹尾日本語らしい日本語でロックに向かったのが清志郎さんです。それもポルノグラフィティーの昭仁さんのような、ハキハキした明治の日本語ではなくて、鎌倉時代というか弥生時代の日本語。

 清志郎さんのボーカルには民俗的な香りがいたします。大脳の奥の方がうずくんですね。凄いボーカルだと思います。不世出の大ボーカリスト、こういうい人は二度とでないのではないでしょうか。本当に凄い。

 アルバム紹介を忘れるところでした。このアルバムの中では、エッチな歌とも読める「雨上がりの夜空に」と「トランジスタ・ラジオ」の二曲がクラシックとなっています。ヒットしたので、偏見時代の私でもリアルタイムで聴いたことがありました。なかなかの名曲です。

 楽曲は典型的な日本のロックです。しかし、清志郎さんのボーカルを高く評価する私ではありますが、ちょっと苦手な部類に属するサウンドなんですね。そういうわけですから、ここいらで口をつぐむことといたします。

EPLP / RCサクセション (1981 キティ)