$あれも聴きたいこれも聴きたい 中学校の頃、昼休みになると放送部による校内放送が行われており、放送室にレコードを持っていくと1曲や2曲ならうるさいことを言わずにかけてくれたものです。自分が持って行ったレコードの評判がいいと嬉しかったですね。

 ジョーディーのシングル・ヒット「君にすべてを」もかけてもらいました。この曲は私の中学校ではちょっとしたヒットになりました。底抜けに明るい曲で、何といっても曲の途中でブレイクが入り、「ヘイ、ヘイ、ヘイ」と右手を皆で突き上げる仕草がかっこよかった。

 シングル盤のジャケットには「あのアニマルズの故郷ニューキャッスルから躍り出た炎のロックンロール・カルテット!!これこそのりのりの大ヒットだぁー!」と書いてあります。こんな軽いのりの似合う心の底からハッピーな曲です。

 ジョーディーは71年に結成されたイギリスはニューキャッスルのロック・バンドです。ニュー・キャッスルということでアニマルズとやたらに比較されたものですが、両者はかなり違います。ただし、ジョーディーとはその地方の住民を指す言葉ですから、地元愛に溢れてはいます。

 彼らは一般にグラム・ロックのバンドと言われます。時代はグラムでしたし、彼らも化粧したりしていましたが、彼らはビジュアルにはほとんど無頓着に見えましたから、当時から私はそうは思っていませんでした。

 それよりも、当時イギリスで勃興していたポップなロックというかロックなポップの新バンドの一派でした。お仲間はスレイドやマッド、スウィートなどです。一つ後の世代がベイ・シティ・ローラーズだと言えば分かっていただけるでしょうか。

 しかし、サウンドはステイタス・クオーを筆頭とする英国の伝統芸能と言ってもいいブギの正統派に位置します。決して大ヒットするわけではないのですが、イギリス人の心を長らくとらえてやまないサウンドです。民俗的な香りさえします。

 ただし、若い人にとっては、AC/DCのボーカリスト、ブライアン・ジョンソンが在籍していたバンドであるというのが最も知られたプロフィールでしょう。お化けアルバム「バック・イン・ブラック」で鮮烈なデビューを飾り、現在まで活躍を続けています。

 これは彼らのデビュー・アルバムです。もちろん全英6位と彼ら最大のヒットになった「君にすべてを」が入っています。他にもシングル曲を含め、全11曲。基本はブギー・ロックで、驚きのバラードが一曲入る構成です。

 面白いのは、民謡をアレンジした曲「ジョーディーズ・ロスト・ヒズ・リギー」です。ジョーディー男が大理石をトイレで無くしてしまい、便壺を引っ掻き回すも見つからないので、ダイナマイトで便壺を吹き飛ばしてしまいます。でも結局大理石はポケットに入っていたという他愛もない歌で、アルバムの締めくくりにこれをもってくるところがこのバンドの性格を表しています。

 アルバムはあまり売れませんでした。彼らはこの後2枚アルバムを出しますが、終わってしまえば一発屋的な感じになってしまいました。しかし、ひたすらハッピーな彼らの楽曲を私は大好きでした。今から振り返ると意外とAC/DCの音楽と似ていたりするのも面白いです。
 
Hope You Like It / Geordie (1973 Regal Zonophone)