$あれも聴きたいこれも聴きたい
 この手があったかと思わせる見事なジャケットです。かわいいですね。裏ジャケは女の子の写真で、見開きの内側はバンド関係者とその家族や友達の集合写真になっています。オールマンズはみんな一家、「ブラザーズ&シスターズ」なわけです。

 いかにも幸せそうですが、悲劇が隠されています。このアルバムの収録中に、ベースを担当していたベリー・オウクリーが、デュアンと同じ24歳の若さ、同じ地元のメーコン、同じバイク事故でこの世を去りました。こんな一致があるでしょうか。恐るべき悲劇です。

 裏ジャケの女の子はそのベリーの娘さんです。表じゃないところに彼らの複雑な気持ちが表れています。ちなみに表はブッチ・トラックスの息子さんです。この男の子もやがてはバンドを率いることになります。ちなみにブッチの甥はデレク・トラックスです。

 そんな悲劇を乗り越えて完成したアルバムは、オールマンズにとって最大の商業的成功を収めました。全米1位を5週間にわたってキープ、シングル・カットされた「ランブリン・マン」も2位までとどく大ヒットとなりました。シングル・ヒットは初めてのことです。

 前作発表後、デュアンの後任としてチャック・リーヴェルが加入しました。ギタリストではありません、ピアニストです。デュアンの後任ギタリストは考えられなかったということで、アンサンブルを強化するためにピアニスト、これは正解でした。

 ベリー・オウクリーは本作で2曲ベースを弾いていますが、後任にはドラムのジェイモーの幼い頃からの友人で、よりファンキーなラマー・ウィリアムスが加入しました。それに、プロデューサーがトム・ダウドから、オールマン兄弟の同僚だったジョニー・サンドリンに変わりました。

 そうした事情もあって、この作品は前作とは地続きではあるものの、二代目オールマン・ブラザーズ・バンドの作品だと考えた方がしっくりきます。チャック・リーヴェルのピアノが全体に大活躍していて、その流麗なサウンドでバンドの表情は大きく変化しました。

 それに、全7曲中4曲がディッキー・ベッツの作品で、カントリー色が色濃く出ています。大ヒットした「ランブリン・マン」では、ベッツはスライド・ギターを担当し、ボズ・スキャッグスと組んでいたレス・デューデックをリード・ギターに迎えてアンサンブルを聴かせています。

 もう一曲、当時はそこそこのヒットしか記録しなかったものの、後に世界中で有名になった曲が7分半のインスト曲「ジェシカ」です。日本でも、気を付けてテレビを見ていると、何でもないBGMに今でもよく流れます。これも運動会向きの曲でベッツ色全開です。

 実は私はこのアルバムがリアルタイムでのオールマンズとの出会いで、それこそ貪るように聴いたものです。圧倒的に好きだった曲は冒頭の「むなしい言葉」です。グレッグのやさぐれたボーカルがかっこいいオールマンズらしい名曲です。ピアノもかっこいい。

 全体に初代の勢いと大きさを引き継ぎつつ、二代目としての個性も浮き出てきた素晴らしいアルバムだと思います。しかし、二人も主要メンバーを亡くしたバンドですから、かなり無理をしていたのでしょう。少し時間を置くとその矛盾が一気に噴出することになりました。

Brothers & Sisters / The Allman Brothers Band (1973 Capricorn)

*2013年8月21日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Wasted Words むなしい言葉
02. Ramblin' Man
03. Come And Go Blues
04. Jelly Jelly
05. Southbound
06. Jessica
07. Pony Boy

Personnel:
Gregg Allman : vocal, guitar, organ
Dicky Betts : guitar, vocal, dobro
Berry Oakley : bass
Lamar Williams : bass
Chuck Leavell : piano, chorus
Butch Trucks : drums, percussion, congas, tympani
Jai Johanny Johnson : drums, congas
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Les Dudek : guitar
Tommy Talton : guitar