$あれも聴きたいこれも聴きたい インド映画のサントラでございます。この映画は、純粋なダンス映画として名高いです。しかし、全編踊っているわけではなく、ダンスの分量そのものは普通のインド映画とさほど変わりません。ダンスをテーマにした映画だからダンス映画というわけです。

 タイトルは邦訳すると「さあ踊ろう」というところです。ストーリーは、ニューヨークで活躍する振付師の主人公が、インドの故郷の村に戻り、そこの劇場の取り壊しを阻止するために、村の皆とダンス・ショーを開催するというものです。よくあるタイプのストーリーですね。もちろんハッピー・エンドです。

 村人は素人ばかりだし、舞台装置もろくなものがなかったはずだったのに、最後のダンス・シーンはめくるめく絢爛豪華な一大ミュージカルになっています。細かいことにはこだわらない、リアリティーを追及するよりも豪華な夢を追うインド映画ならではの演出です。目から鱗がおちました。とてもかっこいいです。

 主演はマドゥーリ・ディキシットという女優さんです。彼女は80年代、90年代とボリウッドを席巻したトップ女優でしたが、結婚して子育てに専念するため6年も休んでいて、この作品で復帰しました。いかにも話題になりそうです。相手役はフィル・コリンズにそっくりなアクシャイ・カンナ、ガンジーの息子役を見事にこなした演技派です。

 ところが映画はこけました。劇中歌の歌詞の一節が、靴直し職人は金細工職人に劣ると言わんばかりだと抗議を受けたために州によっては上映禁止になったことが響きました。カースト問題です。各職業はカーストに結びついているんですね。こういうところに気を付けなければいけないので大変です。

 結局、制作者が公式に謝罪し、歌詞を変えることで禁止は解けましたが、興行的には持ち直すことができませんでした。それでも、評価は高かったので、のちにじわりじわりと人気を回復することになります。

 一方、音楽の方は結構な人気がありました。特にタイトル曲は結婚式の定番になったということです。インドの結婚式ではみんなで音楽をかけて踊るんですよ。私の大好きな女性歌手スニディ・チョウハンの歌声が素敵な曲です。

 音楽監督はサリムとスレイマンのマーチャント兄弟です。このブログでは、「チャック・デ・インディア」に続く登場です。今回は典型的なボリウッド・チューンばかりです。器用な兄弟だと思います。

 もう一つ注目曲は、「オ・レ・ピヤ」で、こちらはパキスタンの歌手ラハット・ファテ・アリ・ハーンが歌っています。彼はハリウッドの「デッド・マン・ウォーキング」でパール・ジャムのエディー・ヴェッダーと共演したことで知っている人もいるのではないでしょうか。力強い歌声が素敵です。

 ほかの曲もいつもの有名なプレイバック・シンガーが揃っていて安心して聴けます。ソヌー・ニガムやシュレヤ・ゴシャール、スクヴィンダー・シンなどなどです。大たい、これまで挙げた名前を覚えておけば事足りますよ。

 このアルバムの楽曲は確かに人気が高くて、インドのMTVでは長い間よくかかっていました。サリム・スレイマンの作る曲はあまり癖がなくて、いかにもボリウッド・スタイルですから安心感があるのだと思います。

Aaja Nachle / Salim - Sulaiman (2007 Yash Raj)