$あれも聴きたいこれも聴きたい イエモンと聞いてまず思い浮かぶのは田宮伊右衛門です。貞子以前は並ぶもののない恐ろしさを誇っていた、名前を書くことすらはばかられるあのお方の敵役です。私は本当に怪談怖いんです。なんと恐ろしいことでしょうか。

 イエモンという言い方はメンバーが使わなかったということで、特にコアなファンからは評判が悪いのですが、解散して10年、そうしたこだわりがなくなって、満場一致でタイトルにすることを決めたそうです。この話はちょっとロック的な感じが薄くて残念です。

 しかし、ジャケットは凄いです。なんじゃこれと思いますよね。お笑いコンビの野生爆弾の川島さんが扮するイエモン侍だということです。訳が分かりません。イエモンってこういうバンドでしたか。意表をつかれました。

 この作品はとれたてほやほやのベスト・アルバムです。ファン投票の結果選ばれた16曲がその順位に従って逆に配置されているという見事にファンにすべてを委ねた構成になっています。年代順とか曲調とかには一切配慮がありません。お見事。

 イエモンは88年結成、2001年解散ということで、まさに90年代のバンドです。私は大して熱心なファンではありませんが、最高傑作とされる「シックス」は大いに愛聴していました。今回、ふらふらとベストを買ってしまいましたが、私のカラオケの十八番「花吹雪」が入っているので十分です。

 このアルバムには彼らのインディーズ時代の曲からラスト・シングルまで彼らのキャリアを網羅する代表曲が収められています。ファンが空気を読んでいるとも言えますし、イエモンがライブ中心に活動していたことの結果だとも言えます。

  彼らは当初はグラム・ロック的なバンドでしたが、やがてポップ路線に寄って行って大ブレイク、以降は独自の路線を突き進むも、やがて訳が分からなくなって解散しました。簡単に紹介すればそういうことですかね。

 しかし、キャリアを俯瞰する16曲が年代に関係なく並べられていて、特に違和感はありません。10年程度のキャリアと短いからかもしれませんが、さほど大きく振れなかったということだと思います。

 彼らの音楽は今聴いても年代不詳の王道ロック路線です。リズムは少し甘い感じがするのですが、ギターのフレーズなどはまさに王道だなあと感じます。それに、洋楽であるところの王道ロックに日本語で真っ向から取り組んだところもポイントが高いです。吉井和哉さんの書く詞は語感がとても新鮮な響きでした。

 私はやはり「花吹雪」が一番好きです。投票結果は3位です。この曲はほかの曲とリズムが少し違いますし、節回しが悪魔的な演歌っぽくて素敵です。それにずるずるの歌詞が素晴らしい。♪病重い想い♪とかいいですよね。ニュー・ウェイブ的でもあり、60年代的でもあり、名曲です。

 それに同じアルバムに入っていた曲で「楽園」もいいです。投票結果は8位。凄味のあるメロディー・ラインが引っ掛かる曲で、彼らの代表曲だと思うんですが、8位でした。他の曲は比較的ストレートな曲ばかりが選ばれています。ファン投票ですからね。

 海外では売れそうにない日本的なロックですが、日本人の私にはこれで十分。凄味のあるロック・スターでしたね。

イエモン Fan's Best Selection / The Yellow Monkey (2013 日本コロンビア)