$あれも聴きたいこれも聴きたい 実は今回は、竹達彩奈とももクロとどちらを買おうか結構悩みました。動画を何回も見て比べた結果、無難なももクロにしました。悩む過程が楽しかったです。両方は買わないところが奥ゆかしいでしょ。

 何だかももクロは凄いことになっています。まだ2作目だと言うのに、まさかのコンセプト・アルバムらしいです。5次元に生まれ変わったももクロが宇宙を舞台に暴れ回るということでしょうか。ライブになるとよりドラマ性が高いようです。

 最初はコンセプト・アルバムと聞いて、キッスの「魔界大決戦」のようなものを想像していたのですけれども、そこまでべたにストーリーがあるわけでもないようです。先にシングルで発表された曲も含まれていますし、曲も詞もバラエティーに富んでいます。

 アルバムに統一感を与えているのは、高いテンションと情報の密度でしょう。やかましいくらいに音が重ねられているように思います。このあたりは松浦あややの「イェーめっちゃホリデー」などに近いです。アイドルの楽曲作りに係わる人々の遊び心というか心意気を感じるところです。引き算の美学ではなくて、過剰なまでの足し算。

 作家陣が実力者揃いのようです。ヒャダインは2曲だけです。目立つところだと、大槻ケンジ、やくしまるえつこ、いとうせいこう。ビートルズっぽい曲「月と銀紙飛行船」は雑誌ストレンジ・デイズの読者にはなじみ深い永井ルイ、他にはペケポンの川柳で有名なゾップの名前も見えます。

 さらに外国のアーティストの曲もあります。YMOが活躍している頃にもアイドルとアーティストのコラボがはやりましたけれども、ちょうどそんな感じに似ています。レコード会社のももクロ・チームが知恵を絞って考えたんでしょうね。ももクロへの愛を感じます。

 楽曲の演奏もありとあらゆる音楽のミクスチャーになっていて、細部にわたるところまで楽しみが尽きません。空耳アワーで有名なマーティ・フリードマンのギターも聴けます。しかし、それにしても過剰な感じがします。黒人音楽に感じる過剰感とはまた違う感覚です。そこがいい。やかましさを楽しむ作品ではないでしょうか。

 私はやくしまるえつこの「Z女戦争」が好きです。永井ルイの曲もほっとします。布袋寅泰の「サラバ、愛しき悲しみたちよ」は前に取り上げた通り、かっこいいです。前作のはちゃめちゃ感は薄れましたが、普通にいい曲が多いです。

 そんな丁寧なプロダクションにこたえて、ももクロの5人はアーティストとタメをはって頑張っています。とことんアイドルなところがいいですね。アーティストよりになってしまうと途端に面白くなくなりますからね。歌もアイドルそのもの。元気があって大変結構です。

 ただ危険です。この作品は老舗ミュージック・マガジンで10点満点を獲得したそうです。こういう音楽雑誌で高い評価を得るというのはあまり誉められたことじゃありません。普段アイドルを聴かない人たちが音楽評論しだしたり、社会学的に語りだしたりすると先行きに暗雲が漂います。まわりに耳を貸さず力強く乗り切ってほしいものです。

 ところで、新しい次元ということで5次元なわけですが、今の宇宙論ではこの世は11次元ですから、次元の数が全然足りませんよ。

5th Dimension / ももいろクローバーZ (2013 キング)