$あれも聴きたいこれも聴きたい インド映画界における2012年最大のヒット作の一つがこの「バルフィ」です。アカデミー賞外国語映画部門のインドからの公式エントリにも選ばれました。残念ながら、ノミネートはされませんでした。ハリウッドはボリウッドを敵視しています。

 映画は耳の不自由な青年バルフィと自閉症の女性バルミルの恋の物語です。インド映画らしく、バルフィはどこまでも純真な心を持った青年に描かれています。まるでチャップリンの映画を見るようなキャラクターです。

 バルフィを演じるのはランビール・カプールというボリウッド界のサラブレッドでして、彼のお爺さんラジ・カプールはチャップリン似のキャラクターでインドのみならず世界を席巻した大スターなんです。インドのご老人はみんなランビールの演技をみて目を細めたわけですね。

 バルミルは私の一番のお気に入りの女優プリヤンカ・チョプラが演じています。彼女はインド人らしい顔の美人女優ですが、スタイルも素晴らしくて、セクシーな大人気女優です。わりとそういう役ばかりでしたから、自閉症の少女の役なんてできるのかと思いましたが、とても素晴らしく演じ切りました。女優として冒険だったと思います。本当に素晴らしかった。感動!

 もう一人、ヒロインが出てきます。もとはこれまたインドのトップ女優カトリーナ・カイフが演じることになっていましたが、プリヤンカがキャスティングされると聞いて、降りてしまいました。そのおかげで登場したのがボリウッドでは新顔のイレアナ・デクルーズ。綺麗な人です。

 音楽の話をしましょう。この映画の音楽はプリタム・チャクラバルティ。キャッチーでフックの強い曲ばかり作るので人気はありますが、剽窃のうわさも絶えず、どこか軽くみられる人でした。ところが、この作品で一皮むけたと評されています。見事にフィルムフェア・アウォードも受賞しました。

 偉そうに申し上げますと、私も見直しました。全体に統一感があって、アルバムとしても十分楽しめる作品です。統一感というのも、全体にボサノバというかマリアッチというか、ラテンの匂いのする調子で統一されています。往々にして彼の場合、くどくなりがちなメロディー・ラインもここではすっとしています。

 今回の映画では、特にみんなでダンスするシーンもありません。劇中歌の入るところでは、カッコいい形で4,5人の楽団が出てきて演奏します。粋な演出です。

 こうやって軽く仕上げたところが、プリタムの新しい側面を引き出したのかなと思います。相変わらず顔はむさくるしいですが、素敵です。

 プレイバック・シンガー陣は女性は昔とあまり変わりません。インドの二大歌姫スニディ・チョウハンとシュレヤ・ゴシャールが仲良く一曲ずつ、もう一人の女性はレカ・バルドワージ。ここ数年のしてきた女性です。

 男性陣はあまりなじみのない人ばかりです。インドのプレイバック・シンガー界は男は結構新陳代謝が激しいんですね。みんなそこそこうまいです。

 サントラとしての評判も上々でして、インド映画界のより一層の発展を予感させることになりました。インドを第二の故郷とする私にとって大変嬉しいことです。

Barfi! / Pritam (2012 Sony)