$あれも聴きたいこれも聴きたい 眩いくらいに輝いています。久しぶりの大スターの登場かもしれません。とにかく今は勢いがあって大変結構なことになっています。

 グラミー賞でのパフォーマンスがあまりにカッコ良かったのでアルバムを購入してしまいました。初めて聴いた時に、マイケル・ジャクソンを思い出しました。音楽が似ているというわけでは決してありません。その溌剌としたスターっぷりが、上りきってしまう前のマイケルに似ているんです。

 英米では記録づくめの大活躍であることに加え、ここ日本でもオリコン・チャートに長く居座っています。シングルの売り上げも凄いことになっていて、エルビス・プレスリー以来の記録なんていう話になっています。賑やかで大変結構なことです。

 公式サイトから引用すれば、今や「和み系の美メロと爽やかな美声で世界的に大ブレイクを果たした彼は、今や“ポップ・ミュージック界のブライテスト・スター”として不動の地位を確立しつつあ」ります。

 白人じゃないところがいいです。エミネムやジャスティン・ビーバーなどスター候補はいろいろといましたが、白人ではなかなか国境を越えた大スターにはなれないと思われます。ローカル臭が漂うんですよね。世界の中心が少しずれてきたんでしょう。

 そこへいくとブルーノ・マースはハワイ生まれ。プエルトリコとフィリピンの血をひいています。フィリピン、来てますねえ。経済も好調ですし、どちらも負けちゃいましたがパッキャオ、ドネアとボクシング界を席巻しましたし、ショウビズでも、ジャーニーやブラック・アイド・ピーズに続き、大活躍です。

 アルバム・タイトルは、活動を始めた当時の彼にレコード会社が「君の曲はアンオーソドックスすぎる」と言われたことに端を発しています。これには驚きました。ここで聴かれる音楽は、全くの王道ポップス路線です。アメリカの音楽界は少しおかしいのではないでしょうか。

 ただ、彼自身も「自分がアンオーソドックスだと感じていた」そうですから、私の感覚がおかしいのでしょうか。ビートルズもストーンズもみんなおんなじに聞こえてしまう年寄りの仲間入りしたのでしょうか。

 この作品は、確かに全10曲、見事にバラエティーに富んでいます。彼はもともとプロデューサー・チームから音楽活動を始めていますから、音作りは達者です。さまざまな制作陣とともにレゲエあり、パワー・バラードあり、元気なロックあり、レトロなテクノありと何でもありの作品集になっています。自らが「ストリップ・クラブ・アンセム」と形容する曲まであります。

 しかし、どれもこれもキラキラと輝く見事なポップスであることは間違いないと思います。歌詞もやんちゃぶりが極めて適切ですし、音楽的な工夫も外し過ぎない節度があります。ちょっとハスキーな若々しい声は万人に好かれるでしょう。申し分ないスターの資格十分。超正統派だと思うんですが。

Unorthodox Jukebox / Bruno Mars (2012)