$あれも聴きたいこれも聴きたい 一般論としてリユニオンは嫌いなのですが、若い頃に入れ込んだバンドとなると、何だかなと思いつつも、気になるものです。2001年に突然行われたロキシー・ミュージックのリユニオン・ツアーは日本にもやってきましたので、ついつい出かけていってしまいました。

 日本のショーは、2001年9月、東京国際フォーラムで3日間行われました。どのショーか忘れてしまいましたが、土日のどちらかだったと思います。複雑な気持ちを抱えつつ見に行ってまいりました。3回目となるロキシーのライブ体験でした。

 結果、とても面白かったです。懐かしさばかりではなく、演奏の質も高く、十分楽しめました。緩い雰囲気は微塵もなく、相変わらずフェリーさんは自己陶酔的なパフォーマンスで、ぶれない駄目男っぷりを発揮していました。

 驚いたのはショーの最後、アンコールの締めくくりがセカンド・アルバムのタイトル曲「フォー・ユア・プレジャー」だったことです。75年以降はライブで演奏されていなかった曲です。この変な曲を流しながら、一人、また一人と観客に手を振って舞台を降りていきます。もちろん楽器もだんだん少なくなって、最後はテープが回るのみ。おっしゃれなエンディングでした。

 メンバーは、ブライアン、フィル、アンディの三人に加えて、オリジナル・ドラマーのポール・トンプソンが復帰しました。馴染みの顔としては、われらがギター・ヒーローのクリス・スペディングの顔が見えます。日本には来ていませんが、「アヴァロン」の歌姫ヤニック・エティエンヌもコーラスで参加しています。

 ツアーのほとんどは録音されていまして、このアルバムは様々なショーからの音源が集められています。われらが東京公演も一曲「モア・ザン・ディス」が収められました。このツアーはセット・リストがあまり変わらなかったようで、アルバムの曲順はそれを忠実になぞっています。

 ただ、日本公演はちょっと短いんですね。「イフ・ゼア・イズ・サムシング」と「マザー・オブ・パール」はなくて、「ヴァージニア・プレイン」と「アヴァロン」はあったりなかったり。前二曲は聴きたかったです。殺生ですねえ。

 アルバムは全22曲。彼らのキャリアを俯瞰する選曲になっています。馴染みの曲ばかりで安心して聴いていられます。最後の冒険を除いて、定番ばかりで無難にまとめたリストです。CDのサブタイトルは「ベスト・オブ・ロキシー・ミュージック」ですから。

 先ほども書きました通り、ライブはとても面白かったです。しかし、こうして改めてCDで聴いてみると、やっぱり歳をとりました。フェリーさんの声は往年の粘りがなくなっていて、かさかさしています。演奏の方は、往時の輝きには及ばないものの、ギター小僧クリス・スペディングの活躍もあってなかなか頑張っています。

 再結成ツアーは足掛け5か月に及ぶ長いものでしたし、会場も大きなところばかりでした。そうなると新アルバムの制作も期待しましたが、それは果たされず、ロキシーはその後、時々、リユニオンしてはライブをやるという悠々自適なバンドになりました。

 昔は、微妙にはみ出し者の位置にあった人たちですが、最後には英国ロック界にユニークな地位を占める大御所の一員となりました。めでたしめでたし。

Roxy Music Live / Roxy Music (2003)