$あれも聴きたいこれも聴きたい 富田勲さんの作品で初音ミクに興味を持ったので、初音さんらしいCDを買ってみました。ニコ動で見るとかじゃなく、CDを買ってしまうところがいかにも古い世代ですね。しかもDVD付きじゃない方を買ってしまいました。そこは少し後悔しています。

 初音ミクは数多のライバルを蹴散らしてボカロ界に燦然と輝くスターになっただけのことはあります。これはもうアーティストですね。私は最初に富田作品を聴いたものですから、彼女の異能な面をまず知って、そこから王道路線に戻りました。その振幅たるや凄まじいです。

 初音ミクは2007年8月に登場して以来、着実にファンを広げ、今や800万人を超える支持層を生み出しています。ネットで確認できるだけでも数万曲の楽曲があると言われ、その上にキャラクターを様々に表現した作品が展開しています。

 ライブチューンことkzは初音ミク・ブームの一翼を担った代表的な音楽プロデューサーです。彼自身、2007年に楽曲「パッケージド」がネット上で注目を集めたことをきっかけに、やがてプロに転向した人です。

 そして、2011年のグーグル・クロームのテレビCMで彼と初音ミクの「テル・ヨア・ワールド」が流れたことで、初音ミクは一般社会にも広く名を知られるようになりました。お互いがお互いの恩人のようですね。

 このアルバムは、ライブチューンの初のベスト盤で、これまで発表してきた楽曲の集大成となっています。新曲も2曲含まれています。ジャケットのアート・ディレクションは世界の村上隆さん。ライブチューンは世界に羽ばたく旬な人だけに豪華な人が集まります。

 初音ミクは、ヤマハの音声合成システム、ボーカロイドを採用したクリプトン・フューチャー・メディア社の音楽ソフトの製品名であり、キャラクター名です。ユーザーが彼女が「歌っている」作品を山のように発表したことで、彼女は生命を得ました。消費者生成メディア、略してCGMによるアイドルです。

 CGMとは何か、kzは「テル・ヨア・ワールド」で歌っています。伝えたいこと、届けたいことが、点が線に、線が円になって、どこへだってすべてつながっていく。ネット時代の恰好のメディアなんですね。あらゆる人の思いをミクはすべて受け止めるいたずらな女神のようです。彼女を通して繋がっていく人々。これは目から鱗です。

 ライブチューンの音楽は典型的なボカロ・チューンに聴こえます。パフュームと言ってしまうと身も蓋もありませんが、ざっくり括ると同じ系統です。ただ、もう少し柔らかくて優しい音になっていますので、全然違うと言われるとそうかもしれません。凝り性の人のようで、どの楽曲からも入魂の様子がうかがえます。

 初音ミクさんのボーカルは、スラーの部分が妙に律儀なところがカワイイです。音程補正ソフトのオートチューンを使った歌が意外にも味わい深かったように、彼女の歌も人の声によるボーカルとは違う生き生きした姿を見せます。不思議なものですね。

 ただ、英語はもう少し勉強した方がいいと思います。考えてみれば日本語は音の種類が極端に少ないのでボカロ向きです。英語は少ない方だといいますが、日本語の100倍は音があるのでなかなか難しいのでしょう。

 今どきのアイドルはこんなところとも競争しなければならなくて大変だなと最初は思いましたが、よく聴いてみると、おそらくそれほど競合しないでしょうね。リアルとヴァーチャル、2次元と3次元などという紋切り型の比較構造は合わない。もっと新しい何かが初音ミクにはありそうです。

 もっといろいろ聴いてみたくなりました。恐るべし、初音ミク。

(歌の題名を間違えていたので訂正しました。コメントありがとうございました。)

Re:Dial / livetune feat. 初音ミク (2013)