$あれも聴きたいこれも聴きたい スコットランドと言えば思い出すのは、ある年の12月、エジンバラだったかグラスゴーだったかの日照時間の合計が5分だったというお話です。1か月でたったの5分。それ以来、イギリスで聴いたこの話が私のスコットランドの印象を支配しています。

 そしてもう一つあげられるのは、メアリー1世、メアリー・スチュワートです。高校時代、ヨーロッパ近世の歴史に興味がありまして、ヨーロッパ中の血みどろの王位争奪戦の中心人物の一人ですから、よく覚えています。悲劇的な結末ですしね。

 「私はスコットランドと言えばタータンチェック~ベイ・シティー・ローラーズです」という幸せな人もいるでしょうが、私にとっては決して明るい土地とは言えません。スコットランド・ファンの娘には言えませんが。

 メンデルスゾーンはどちらかというと、ベイ・シティー・ローラーズの方かもしれません。スコットランドに旅行した時に着想したのがこの曲ですが、全体に力強くて明るいです。

 メンデルスゾーンは20歳の時にイギリスへの演奏旅行のついでにスコットランドを旅し、エジンバラのメアリー・スチュワートゆかりの宮殿を訪れます。「そのそばにある修道院跡において思いついた16小節分の楽想が、スコットランド交響曲の最初の出始めとなった」と父親あての手紙に書き記していることが、お世話になっているサイト「クラシック名曲解説」に書いてあります。

 メアリー・スチュワートがらみだからか、もの悲しい旋律もあるのですが、それでも全体に比較的明るい。それは、曲が完成したのが10年後というのも関係あるかもしれませんね。

 この曲は、画才も持ち合わせていた神童メンデルスゾーンが、風景を音で描写したと言われています。ユーチューブのコメントには、映画を見るよりもこれを聴いた方がよいとまで書いている人がいました。スコットランド紀行はこれにおまかせです。太陽が5分の私には、あまりスコットランドがイメージできないのですが、この曲は確かに情景描写的で映像が見えてきます。

 しかし、脳内映像よりも、これでもかこれでもかと隙間なく埋め尽くされた美しい旋律にやはり耳が奪われます。基本的に甘~いメロディーが休むことなく連打されています。ロマン派ですから、現代のポップスと通じるところも多く、いろんなところを切り取ってヒット曲を作れそうですね。

 ロンドン交響楽団を指揮をするのは、メンデルスゾーンのスペシャリストでスイス出身のペーター・マークです。彼は大学で哲学を勉強したり、香港で禅の修行をしたりと異色の経歴ですが、そんな彼がなぜメンデルスゾーンかというのは興味あるところです。

 久しぶりにクラシックらしいクラシックを聴きました。旋律の美しさを追求した感のある作品なので、気楽に楽しむことができます。お茶なんか飲みながら聴くといいですね。

Mendelssohn in Scotland / Peter Maag, London Symphony Orchestra (1960)