$あれも聴きたいこれも聴きたい-Peter Gordon _ Star Jaws
 アートとエンターテインメントとの境界は那辺にあるのでしょうね。同じ音楽を二つに分ける意味があるのかと言われれば確かに意味がないようにも思います。そんな区別を意識せずにいろんな音楽を聴きたいのですが、やはりまだまだ聴く時の心構えが違ってしまいます。

 ピーター・ゴードンはカリフォルニア大学で作曲学士となり、ミルス大学の現代音楽センターで院教育を受けた人ですから、アート系の人です。ニューヨークを拠点にダンスやオペラなどの作曲を始めとする活動を続けています。いろんな賞をとっている人でもあります。

 そんな彼のラブリー・ミュージックに残した作品がこれです。本人の解説によれば、様々な作曲技法を使って曲が書かれています。さらにボーカル入りの曲もあるのですが、それらは、「ポップ・ソングというよりも歌曲、すなわちアート・ソングとして扱った」と語っています。

 ところが、楽器の編成はまるで普通のロックです。ピーターはサックス奏者でもあるので、管楽器が入っているのですが、ギターにベース、ドラムスにクラヴィネットといった編成です。それで普通にポップな楽曲をやっているんです。

 チャートをにぎわすような感じではありませんが、イーノの初期作やフィル・マンザネラのソロなどとは全く地続きで違和感なく聴ける類の音楽が並んでいます。それを現代音楽的に解説しているので混乱するわけです。

 はたと気づいたのは、普通のロック編成でアートな音楽をやることに違和感を持つのは先入観だということでした。そんなこともあってもいいわけですね。何だか混乱してきました。虚心坦懐に音に耳を傾けるのは結構難しいものです。

 ピーター・ゴードンのこの作品は、私のラブリー・ミュージック・シリーズ第3弾です。以前、ラブ・オブ・ライフ・オーケストラをご紹介しましたが、その時に少し触れたCDを入手したのでご紹介する次第です。レーベルから直接購入したものです。

 LPジャケットはピーターの脱力線画でした。CDでの再発にあたってジャケットが差し替えられて、タイトルに寄りました。タイトルはもちろんかの「スター・ウォーズ」と「ジョーズ」をかけたもので、発表された1978年という時代を思わせます。

 脱力系ポップな歌曲「ライフ・イズ・ボーリング」や、本作に書き下ろされた「スター・ジョーズ」、4楽章からなる交響曲の一部「インターヴァリック・エクスパンション」、学生時代に作ったというサックスと発振器のための「マッチョミュージック」など多彩な内容の作品です。

 この作品はカリフォルニアで種が蒔かれ、ニューヨークでラブ・オブ・ライフ・オーケストラとともに発展したものを、再びカリフォルニアに戻って、現代音楽センターのスタジオで働いていた長年の共演者ブルー・ジーン・ティラニーたちとともに作り上げられたものです。

 エンターテインメント世界の人と違って、作品が目的となっていないところが面白いです。エンターテインメントとしてもアートとしても楽しく聴ける面白い作品だと思うので、もっと構えずに聴けるようになりたいものです。ピーターに試されているようです。

Edited on 2020/7/2

Star Jaws / Peter Gordon (1978 Lovely Music)