$あれも聴きたいこれも聴きたい-Yo La Tengo _ Fade インディーズという言葉は本来音楽のジャンル名になる言葉ではないはずです。メジャー・レーベルじゃないということにすぎないわけですから、クラシックだって演歌だってインディーズであっておかしくありません。

 しかし、演歌の場合は自主制作と呼ばれますし、パンクやメタルはインディーズとは呼ばずパンクやメタルと言われます。インディーズに認定されるのは、やはりロックやフォークだけですね。それも同じような色の音楽がそう呼ばれているような気がします。

 ヨ・ラ・テンゴはUSインディーズ界の大物です。実は私はUSインディーズ界は苦手でして、シー&ケイクとかあまり好きになれませんでした。というわけで、普通ならヨ・ラ・テンゴは敬遠してもおかしくないのですが、思い込みと言うのは恐ろしいもので、てっきりラテン系だと思ってつい買ってしまいました。

 ヨ・ラ・テンゴは、アイラとジョージアの夫婦にジェイムズを加えた3人組です。一時期のブリグリのようなバンドだということですね。結成は84年と言いますから、とても息の長いバンドです。アメリカ人でして、決してラテン系ではありませんでした。

 ウィキペディアによれば、彼らの音楽ジャンルは、インディー・ロック、オルタナティヴ・ロック、ドリーム・ポップ、ノイズ・ポップ、エクスペリメンタル・ロックです。面白いですね。息が長いだけにいろんなムーブメントが彼らを過ぎ去っていきました。

 この作品は、20年にわたって活動を共にしてきたプロデューサーから離れて、今回の作品は同じくインディーズ・バンドのトータスのジョン・マッケンタイアをプロデュースに迎えて制作されました。彼は奇しくもシー&ケイクのメンバーでもありますね。

 そうなると苦手なはずなんですが、このアルバム、結構好きです。特に1曲目の「オーム」はいいですね。ワン・コードの曲を3人で、もわーっと歌います。三人で歌ったのは初めてだそうで、仲良さそうな雰囲気が濃厚に出ていてとても愛らしいです。

 このサウンドの系譜は、ジョナサン・リッチマンに遡るのかなと思います。基本的に情けない系ポップ・サウンドですね。アコースティックで力の抜けたサウンドだなあと思います。特にドラムですか。軽いぱたぱたしたドラムです。

 仔細に見ていくと、彼らのサウンドにはつんつん尖った部分もあるのですが、全体を覆う少し霞がかった雰囲気が包み込んでしまいます。そこが好き嫌いの分かれるところでしょうね。微妙なバランスなんですが、私は好きに分類することができました。

 12年暮れに来日して、会場との質疑応答によってその場で曲を決めていくライブを行ったそうで、あちこちにインタビュー記事が残っています。頭の良い人たちなんでしょうね、どれもとても面白いです。

 脱力、赤裸々、等身大、真っ裸。USインディーズの真髄はここにありました。味わい深いバンドです。

Fade / Yo La Tengo (2013)