$あれも聴きたいこれも聴きたい-Amazulu
 私には、このアマズルが大ヒットしなかったことが信じられません。全く理解不能です。ボーカルのアン・マリーは、スターの素質十分だし、音楽も最高にポップなのに何故?イギリスではそこそこヒットはしましたけれども、それでは全く十分ではありません。

 レコード会社も力を入れていて、本作品にはプロデューサーに、セリーヌ・ディオンやシーナ・イーストンなどを手がけたクリストファー・ニールとか、スペシャルズのジェリー・ダマーズ、レゲエの重鎮デニス・ボーヴェルと一流どころが揃っています。

 アマズルはロンドンでレゲエ好きの女の子が始めたバンドです。最初は冗談だったそうですが、瓢箪から駒で、次第にバンド活動は本格的になっていきました。最初は男性も一人いたそうですが、アルバムのクレジットは女性三人組ということになっています。

 英国で、メジャー・デビューするとそこそこのシングル・ヒットを飛ばし、アン・マリーはその格好良い容姿でティーン雑誌を飾るアイドルとなりました。彼女はジャマイカからの移民ですが、両親には中国とシリアの血が混ざっているそうで、インターナショナルです。

 このデビュー作品は、それまでのシングル作品をすべて集めたベスト・アルバム的な構成です。ただ、シングル・ヒットといっても最大のヒットが5位どまりで、ほかの曲はトップ10入りは逃しています。アルバムに至ってはかろうじて100位以内にチャート・インしたくらいです。

 彼女たちの音楽はレゲエやカリプソ、ソカなどがごちゃごちゃに混じって、実に楽しいものです。中近東な「カイロ」という曲もありますし、ものすごく萌える切ない「ロンリー・ ドゥ」という曲もあります。それに「エキサイタブル」は本格的なソカ・ミックスです。

 スペシャルズのジェリー・ダマーズがプロデュースした「ムーンライト・ロマンス」はカリプソ風味です。一発屋ボビー・ブルームの「モンティゴ・ベイ」をカバーしていますが、これは大げさに言えば米国も席巻しました。知る人ぞ知るというステータスではありますが。

 要するに捨て曲がありません。しかも、レゲエやソカに対する深い敬意も感じられますし、何よりもレゲエの心をつかんでいます。ポピュラー音楽のあるべき姿をすべて持っていると思うんです。今聴いても全く古びていませんし。私は今でも時々聴いてはウキウキしています。

 ただ、惜しむらくは、この作品、CD黎明期のものだけに音が今一つなんです。ぜひリマスターしてほしいものです。それに、ほとんどクレジットがありません。曲の作者も書いてないですし、メンバーもフォトジェニックな三人だけで、ゲスト演奏者の名前もありません。

 ボーヴェル周辺の達者なゲストも入ってると思います。そういう意味では、やや作られたところがあるのかなあと、心配にもなりますが、ライナーを書いている花房さんが何回もステージを見てらっしゃるそうなので安心しました。 しっかりしたステージだそうです。

 若い女の子たちが、圧倒的なエネルギーでもって、楽しげにわいわいやっていて、それが実に決まっています。これを応援しなくてどうする、と中村とうよう氏もいい点をつけていました。実にもったいない人たちです。彼女たちは翌年には解散してしまいました。残念。

Amazulu / Amazulu (1986 Island)

*2013年2月25日の記事を書き直しました。



Songs:
01. Too Good To Be Forgotten
02. Excitable (Soca mix)
03. After Tonight
04. All Over The World
05. The Things The Lonely Do
06. Montego Bay
07. Don't You Just Know It
08. Cairo
09. Moonlight Romance
10. Upright Forward

Personnel:
Lesley
Anne Marie
Sharon