$あれも聴きたいこれも聴きたい-Blue Gene Tyranny _ Just For The Record 誕生日が同じだと親近感がわきます。私の場合、元日という特殊な日なので、感慨も一入です。ご紹介するブルー・ジーン・ティラニーは1945年元日生まれのアメリカ人です。私よりも15歳年上です。

 妙な名前ですが、もちろん芸名で、本名はロバート・シェフという人です。子供のころからピアノを勉強していて、15歳の時にはアメリカの権威あるBMI学生作曲家賞を獲得しています。チャールズ・アイヴスやスティーブ・ライヒなども同じ賞を受けていますね。

 ティラニーはその後、60年代、70年代をとおして、ジャズやロックのバンドでツアーを続けます。この中にはカーラ・ブレイや、何とイギー・ポップなんていう名前が見られます。一方で、大学で音楽を教えたり、現代音楽センターで技師として働いたりと、バイオが長い人です。

 この作品は、78年に彼が働いていたミルズ大学の現代音楽センターで録音された作品で、発売は79年、あのラブリー・ミュージックからです。そうです。私のラブリー・ミュージック・シリーズ第二弾です。

 LPは全部で7曲。最初の4曲はラブリー・ミュージックの創設者ミミ・ジョンソンの夫であり、アメリカを代表する現代音楽作家のロバート・アシュレーのピアノ作品「ソナタ」です。1、2、3と来て、4曲目は1曲目から3曲目を同時に演奏しています。

 コロンブスは簡単な器具だけで新大陸を発見したという内容のノートに加えて、アシュレーによる曲の解説が書いてあるのですが、難しくてよく分かりません。楽曲はいかにも現代音楽のピアノ曲です。それをティラニーがソウルフルに弾いているところがなかなか面白いです。

 2番目はフィル・ハーモニックという人の「タイミング」という曲です。これが面白い。左右両チャンネルから、ティラニーの弾く同じような音色のシンセの音がずっと流れます。同じ音が持続しますが、フィルの「チェンジ・ナウ」と言う声が何回も入り、その都度、音階が変わります。左右両チャンネルは別々に録音されています。10分もあるんですが、こちらも構えてしまって、結構、緊張感が漂っていて、長さを感じさせません。面白い実験です。

 3番目はポール・デマリニスの「グレート・マスターズ・オブ・メロディー」。これはポールの操作する電子回路の音に合わせてティラニーがクラヴィネットを弾くという作品です。電子回路の音はまあ可愛らしいシンプルな発振音です。私はDJ魔法使いを思い出しました。テクノによくあるタイプの可愛い曲です。

 最後はジョン・ビショフの「ランデヴー」。様々な電子音による実験的な作品です。ティラニーさんにはロックやジャズの血が濃いので、これはなかなかヘビーな作品に仕上がっていて、聴きごたえがあります。

 総じて、70年代のアメリカ現代音楽界の典型的な音だといえるのではないでしょうか。当時は難解な芸術音楽だと思われていたような気がしますが、電子音楽花盛りの現代から振り返ると普通に楽しめる作品です。面白いものですね。

Just For The Record / "Blue" Gene Tyranny (1979)

まったく、この作品とは関係ないんですが、見当たらなかったのでとりあえず。