$あれも聴きたいこれも聴きたい-Tommy February _ Tommy Airline
 お遊びの単発プロジェクトかと思われていたトミー・フェブラリーでしたが、一旦終了してブリグリが活動を再開した後もラブ・コールが鳴り止まなかったのでしょう。本家を超える人気を博してしまいました。というわけで、めでたく復活して、2枚目のアルバムが発売されました。

 今となっては、このソロ・プロジェクトを仕切っている音楽担当のマリブー・コンバーティブルはブリグリのリーダー奥田俊作さんであるということが明らかになっていますが、当時はだれもがブリグリの行く末を心配したものでした。ドリカムのごたごたも記憶にあった頃ですし。

 この2枚目には力が入っています。目出度くも入手できた初回限定盤は横長のジャケットで付録が満載です。コンセプトは架空の航空会社トミー・エアライン。歌詞カードはパスポートですし、ボーディング・パスから荷物のタグも入っています。

 加えて10枚もの縦長ポストカードが入っていて、チケット入れの紙ケースを模したり、緊急時のインストラクション風イラストが描いてあったりします。後者ではご丁寧にモデルがトミー・フェブラリーその人です。

 これは楽しかったことでしょう。みんなでわいわい言いながら作ったであろう雰囲気がびんびん伝わってくる見事な作品になっていると思います。棚に収まりにくいのが難点ですけれども、まあ細かいことはよしとしましょう。

 と言いながらもう一つ。おまけはいいのですが、初回限定盤はレーベルゲートCDなところが欠点です。短期間存在した蛮行です。コピー制限をするために盤に細工をするというレコード会社のあがきです。そのため、音質も何だかよくないし、残念です。

 この作品はデビュー盤同様、80年代的なエレクトロ・レトロなエレポップの楽曲がつまっています。キャンディー・ポップという言葉がぴったりします。歌詞に出てくるカフェオレやクレープ、ベスト・アルバムのタイトルになっているソーダ・ポップなデイドリームな世界です。

 奥田俊作という人は器用な人なので、こういう風にテーマがはっきり決まっている方が力を発揮する気がします。まさに職人です。ここではコンセプト自体はトミー・フェブラリーにまかせて、音の方は思いっきり楽しんだという感じです。

 基本はどれもシンセ・ポップで、シンセ・ビートを利かせた「ダンシン・ベイビー」や、シンセによるシャワーでダークな雰囲気の「スウィート・ドリーム」など、決して単調ではありません。これはデペッシュ・モード風とか、ゲイリー・ニューマン風とか当時を知る我々には楽しいです。

 トミー・フェブラリーのキャラ設定に関しては私はお手上げです。セカンド・アルバムではさらに進化しています。ただ、「アイ・スティル・ラヴ・ユー・ボーイ」などはブリグリっぽすぎる感じもして、なかなかこのまま進むのは難しいのかなと思ったのも事実です。

 とにかく、川瀬智子の魅力が全開です。封入されているDVDを見るともう何だか凄いです。リミッターを解除してやりたい放題。ソロだとリーダーとしての自覚が違うのでしょうし、やはり天性のボスキャラだとお見受けしました。 

Edited on 2017/12/24

Tommy Airline / Tommy February6 (2004 DefSTAR)