$あれも聴きたいこれも聴きたい-Brilliant Green _ The Winter Album 真冬に聴くのにふさわしいタイトルです。ずばり「ウィンター・アルバム」ですからね。トミーさん自身の言葉によれば、「冬だし、シュンちゃんが『白いイメージ』って言っていたので。曲も冬っぽいし、これがいいかなあって」ということでついたタイトルです。

 こういうタイトルになると、やはり冬に聴くことになりますね。このアルバムは発売時に買いましたが、それからというもの、聴くのはいつも冬です。言葉の力は大きいものです。まさに言霊。ところで、初版スリーブ・ケース入りは現在入手困難だということです。ちょっと嬉しいですね。

 ブリリアント・グリーンは、川瀬智子さんのソロ・プロジェクトのトミー・フェブルアリーのために一旦活動を休止しましたが、1年足らずでトミフェブが終了し、バンドが復活しました。当時は頑なにトミフェブとブリグリは関係ないとされていましたが、後にどちらも同じだということが判明して、ファンは納得いたしました。

 同じバンドでやっていたら、それはそれで面倒くさいことになっていたでしょうね。コンセプトがまったく違いますからね。企画ものと王道ものとは区別するのが自然です。買う方にとっても便利ですから。しかし、彼らの場合、どちらも路線は違うものの遊びではありませんでした。

 そのあたりは、本作品のライナー・ノーツで青木優さんが書いているとおり、プロ意識が徹底してきた賜物でしょう。当初は遊びのつもりだったかもしれないトミフェブを経て、エンターテイナーとしてのプロ意識が透徹するという理想的な展開でしょう。

 本作品では、ブリグリがこれまで結構こだわっていたように思える生楽器に加えて、初めて打ち込み楽曲が誕生しました。機材の進歩もありましたから、自然な移行だったんでしょうね。トミフェブでのエレクトロ・レトロ路線で発見した最先端機材はもはや生楽器と同様の意味を持っていたのでしょう。

 とても肩の力の抜けた作品だと思います。リーダーの奥田俊作さんは、「細かく構築してアレンジしっかり固めるとかじゃなくて、もっと基本的な、深いものが出せればいいかなっていう」と言っていますし、ギターの松井さんは、自作曲に関して「その時にたぶん『自分なりにすきにやろ』と思って、あんまりムリせんと書いたからかね」なんて言っています。

 英語詞の歌も復活しましたし、アレンジも打ち込みも含めて多彩になりました。相変わらず美しいメロディーと洋楽テイストあふれる楽曲の仕上がりは完成度が高いです。トミーさんの歌もいろんなアレンジが施されているようで多彩な色合いを見せています。

 楽曲もゴシックが入っている「フォーエヴァー・トゥー・ミー」を筆頭に標準以上の出来の曲が並んでいます。

 ただ、トミーの存在感がとても大きくなっていて、楽器のアンサンブルを中心にしていたブリグリらしい感じが少し薄れています。それならそれでトミフェブあるいはヘヴンリー・プロジェクトの方がらしいです。そして、何よりも何だか少し大人しいような気がします。そこが引っかかりました。いいアルバムなんですけれども。

The Winter Album / The Brilliant Green (2002)