$あれも聴きたいこれも聴きたい-Brilliant Green _ Los Angeles 何がどうロスアンジェルスなんでしょうか。題名と同じインスト曲が含まれていますが、インストだけに謎です。ちなみに彼らのアルバムでのインスト曲はこれが初めてです。

 記憶が定かならば、確か合宿して制作されたのではなかったでしょうか。違いますかね。ますます奥田俊作さんの本領発揮ということで、細かいところまで練りに練られた音作りです。

 ギターの松井さんによれば、ギター・ソロを録音しても、一晩中作業を続ける奥田さんによって翌日にはあっさり消されてたりしたこともあるそうで、それを楽しげに話す松井さんも松井さん。そういうバンドなんですね。いわばリーダーに全面の信を置くワンマン・バンド。

 この作品からは英語詞だけの曲は消えて、全部日本語メインの歌詞になりました。英語詞の歌がアルバムに軽さを与えていたので、この作品はかなり重い感じになっています。面白いものです。

 サウンドは先ほども書いた通り、これまで以上に緻密に練り上げられています。アルバム全体というよりも一曲一曲入魂の作業という塩梅で、曲ごとにおそらくテーマがあるんでしょうね。少しずつ表情が違って面白いです。マニア的に紐解く楽しみがありそうです。

 完全に後付の見方ですけれども、トミー・フェブルアリー6とヘヴンリー6が蠢いてきているように感じます。全曲日本語詞になったことに合わせるようにトミーの歌詞のセンスは一皮むけた感じがありますし、ボーカルの処理が見事に声質にあってきていて、彼女の個性が際立ってきています。

 そうなると、大人びた洋楽テイストの本格派ロック・サウンドだけでは収まらなくなってきます。もともと、彼女のボーカルはそれほどロック的ではありませんからね。ミスマッチが面白いとは思いますが。

 このアルバムからは、シングル曲は2曲です。あいかわらずトップ10入りはしていますし、このアルバム自体もオリコンで2位まで上がっています。決して派手ではなかったですが、落ち着いた活動ぶりで頼もしかったです。

 また、この作品にはギターの松井さんの曲が2曲入っています。ますます奥田さんのワンマンぶりが発揮されてきているので、その釣り合いをとる意味もあったのでしょうか。なかなかいい曲です。ギターの音も前よりいろいろありますし、大活躍ですね。

 ジャケットとブックレットの写真は、写真家吉場正和さんによる作品です。夜の闇と光の具合が何とも言えず素敵です。彼は「10年間ひとりの恋人を見つめつづけた写真家の、ここにしかない、一途な愛の記録」の写真集「あき」を出しています。そのキャプションをかみしめながらみると、ますますいい写真に思えてきます。

 そのジャケットも含めて、とてもセンスがいいアルバムです。ポップな2枚目に対して、大人な3枚目になりました。一応、到達点ということでしょうか、彼らはここで一旦活動を停止して、トミー・フェブルアリー・プロジェクトに進むことになりました。 

Los Angeles / The Brilliant Green (2001)