$あれも聴きたいこれも聴きたい-Karl Bohm 03 ブルックナーの交響曲第4番は「ロマンティック」と題されています。諸説ありますが、本人が弟子たちにこの曲の性格を「ロマン的」と説明していたことからついたという説が有力なようです。自らロマン派宣言です。

 とても分かりやすいと申しますか、ザ・クラシックという感じがします。演歌やパンクには型がありますが、これはクラシックの型と言ってもよいような気がします。要するに私のような素人が思い描く交響曲の典型です。ロマン派の音が現在まで生き続けているということなんでしょうね。

 しかし、正面から「ロマンティック」と来られると。この言葉ほど通俗化してしまった言葉はありませんから、少々困ってしまいます。今、使っている意味での「ロマンティック」とはかなり遠いのでしょう。ロマン主義とは、ブリタニカによれば、古典主義に対して、「知性よりも情緒を、理性よりも想像力を、形式よりも内容を重んじた」人間復権の思想です。色恋沙汰のことじゃないわけですね。

 西洋クラシック自体がポピュラー音楽愛好家からすれば古典主義そのものです。その中でのロマン主義ということですからね。何だか面白いですね。

 この曲には、ブルックナー先生自身の解説が添えられていて、中世の騎士たちの森での狩りをイメージしていたということです。一種の標題音楽、現代風に言えば、サントラとも言えます。

 曲は、ブルックナー開始と呼ばれる弦楽器のトレモロから始まりますが、そこがまさに深い森の霧を連想させるということになっています。あまり霧の感じはしませんけどね。

 さらに、「中世の騎士」が曲者です。中世の騎士と言えばアーサー王と円卓の騎士たちが思い浮かびますが、残念ながら私の頭に真っ先に浮かんだのはアーサー王はアーサー王でもモンティ・パイソンの映画でした。

 ヨーロッパ大陸の深い森のイメージも難しいです。バイエルンあたりの森を想像すればいいのかもしれませんね。しかし、これまた残念ながら行ったことがないんですよね。

 それよりも、サウンド・オブ・ミュージック的な開けた大地を思い浮かべてしまいます。ヨーロッパも大陸ですからね。だだっ広い草原を馬で駆け回る感じ。狩りですか。 

 この作品は、ブルックナーの愛好家からは軽く見られがちだということです。ベタと言うと怒られそうですが、要するにくっきりと分かりやすいからでしょうね。そこは私のようなクラシック素人には心地よいのですが、真剣に向かいあうと物足りないのかもしれません。

 少し残念なのはフィナーレです。もう少し盛り上がってもよかったんじゃないかと思います。あんまり言うと、クラシック・ファンの方に不敬罪で逮捕されそうですね。

 ところでまたまたカール・ベームです。私は彼に思い入れがあるわけでも何でもなく、名盤と言われる作品を買っていますと、彼の作品がたまたま多かったということです。

 このジャケットの写真からして、いかにも厳しそうな人で、私のようないい加減な人間には恐ろしいのですが、オーケストラの団員にも評判が悪かったそうですね。重箱の隅をつつくような指摘ばかりしているのに、仕上がりの音楽は素晴らしいという、管理職の皆様に是非秘訣を伝授してもらいたいような人です。

 これはこれで勉強になりました。まだまだ修行の道のりは険しそうです。

Bruckner : Symphony No.4 / Karl Bohm, Vienna Philharmonic Orchestra (1973)