$あれも聴きたいこれも聴きたい-Mr Big 01 ミスター・ビッグで検索しますと、トシちゃんのシングル曲が引っ掛かります。そう言えば、私たちの世代にとってビッグの代名詞は田原俊彦さんでしたね。懐かしいです。「ビッグ」という言葉には胡散臭さを感じてしまうのですが、それはこの世代の記憶によるのではないかと思います。

 他にも「恋するロミオ」をヒットさせたイギリスのバンドが同名のバンドでした。そんなこんなで、私はミスター・ビッグというバンド名に対して、少し残念な気がしてなりません。バンド名は、今や再結成クイーンのボーカリストと紹介した方が通りが良いポール・ロジャースのバンド、フリーの楽曲名から名前を頂いているということですから、由緒正しいものなんですけれども。

 さて、ミスター・ビッグは89年に結成されたハード・ロック・バンドです。四人のメンバーはそれぞれが華やかな経歴の持ち主でしたから、いわゆるスーパー・グループとして注目を集めて、成功を収めました。特に日本で人気が高く、出したアルバムはほとんどがオリコンでトップ10に入っていますし、4枚目のアルバムは1位にもなりました。

 このアルバムは彼らのセカンド・アルバムで、彼らの最も売れたアルバムです。日米でプラチナ・ディスクに認定されています。それに何よりシングル・カットされた「トゥー・ビー・ウィズ・ユー」は全米1位の大ヒットとなりました。

 彼らの場合、様式美を追求するというよりも、ポップな持ち味が強いので、一般にメタルとは呼ばれないようです。そこで、ハード・ロックと呼ばせて頂きますが、このアルバムは、ハード・ロックのアルバムとして完璧な作品だと思います。

 各メンバーが超絶技巧の持ち主ですが、あまりそれを前面に出すのではなく、バンドのアンサンブルを重視したサウンドになっています。ドラムスにギター、ベース、それにボーカルという極めてシンプルな構成で、華麗なハード・ロックが展開します。

 極めつきの「トゥー・ビー・ウィズ・ユー」を始めとするハード・ロッカーお約束のバラードもしっかり収録されていて、色鮮やかです。おまけに、マキタの電動ドリルにギター・ピックを取り付けた奏法で話題も提供しています。これが日本のマキタ製というところがまた憎い。

 完璧と申し上げましたが、日本人が思い描くハード・ロックの最大公約数になっていると思うんです。私はそれほど入れ込んだわけではありませんが、ミスター・ビッグを聴くとほっとします。バラードも含めて、どこからどう聴いてもハード・ロックなんですね。

 同時期のガンズ・アンド・ローゼズやニルヴァーナに比べると、とても端正できわめてオーソドックスです。そんなところが折り目正しい日本人に受けるのだろうと思います。

 たまにはこういうアルバムもいいものです。「トゥー・ビー・ウィズ・ユー」はやっぱり名曲ですしね。彼らくらいうまいバンドだからこそ生きる曲です。

Lean Into It / Mr. Big (1991)