![$あれも聴きたいこれも聴きたい-Dr Feelgood](https://stat.ameba.jp/user_images/20121209/22/memeren3/7b/5d/j/t02000201_0200020112323393326.jpg?caw=800)
多くの人はデスメタルやハードコアを想像するのではないでしょうか?そうではありません。これは英国パブ・ロックの代表格ドクター・フィールグッドの単純明快、土性骨の座った無骨な ブキブキ・ロックン・ロール・アルバムです。原題は直訳すると「まぬけ」ですね。
特に趣向を凝らそうという意思など、はなからありません。やたらとストレートなギター、ベース、ドラムス、ボーカル、時々ハーモニカのロックン・ロールです。全13曲のうち、6曲が昔のロックン・ロールのカバーです。しかもライブ。ウィルコ・ジョンソンのじゃきじゃきギター・カッティングが素敵です。
まるで映画を見ているかのような典型的な旧式ロックン・ロール。映画でよく見かけたパブで演奏しているシーンのような気がします。さすがにパブ・ ロックというだけのことはあります。さあ飲むぞ、飲むぞお、歌って踊って、明日も幸せってな感じですね。時にはこういう音楽もいいものです。ただ、やっぱりレコードで聴くより、ライブですね。
パブ・ロックです。パンク前夜のイギリスで、パンクの揺り籠となったシーンです。パブというと日本では洒落たイメージもありますが、イギリスでは単なる地元の飲み屋です。それに英国のパブはそれはもう千差万別で、バンドが演奏するところもいろいろあって、中にはフリー・ジャズをやるところもありました。
しかし、パブ・ロックのパブは労働者の集まる普通の飲み屋。地元のおっさんや若者が集まる郊外や小都市のパブ。パブ・サーキットをめぐるバンドは、クリフ・リチャードをやれ、なんて酔っ払いの無茶ぶりを かきわけながら、こういうロックン・ロールやブルースをやるんですねえ。プログレやってもしょうがありませんし。
ドクター・フィールグッドは、ボーカルのリー・ブリローとギターのウィルコ・ジョンソンがそろっている時期が黄金時代。これはその黄金時代のライブをパッケージしたアルバムで、見事全英1位となりました。こんな無骨なアルバムが1位とは画期的です。
彼らの結成は71年。このアルバムは77年。パブ・サーキットをまわって人気を得てきた実力派です。売れてもセミプロっぽいたたずまいの消えない愛すべきバンドでした。今でも現役ですが、オリジナル・メンバーは誰もいません。一つの型をつくったバンドだといえます。永遠にバンドが続くかもしれません。
ところで、パブ・ロックという言葉は面白いですね。演奏する場所を冠した名前ですから。音楽は聴いている空間とともにありますから、演奏者も場所を選びます。逆に場所にふさわしい音楽が生まれるのも理にかなっています。
他にはスタジアム・ロックなんていうのもありました。クイーンです。ダンスホール・レゲエもありました。シャバランクスです。名前を聞いただけでどんな音楽か目に浮かぶようですね。他にもいろいろ考えてみても面白そうです。古城ロック(ブラック・サバス?)、大平原ロック(グレートフル・デッド?)、山岳ロック、砂漠ロック、美術館ロック、教会ロック、銭湯ロック、洞窟ロック。そういや監獄ロックってのもありましたねえ。
Stupidity / Dr. Feelgood (1976)