$あれも聴きたいこれも聴きたい-Air Supply 01 このジャケットを見て、「ペパーミント・サウンド」を思い浮かべる人はいないでしょう。あまりと言えばあまりのジャケットです。これでは本人たちはよくても日本のレコード会社は通りません。というわけで、日本で発売されたLPには、真っ青な海に赤いウィンド・サーフィンが写っていました。

 エア・サプライはオーストラリア出身です。75年に結成されて、オーストラリアで人気を博し、アメリカ進出を果たします。最初は失敗しましたが、アメリカの業界有名人クライブ・デイヴィスの耳に留まり、80年初めに彼のアリスタ・レコードから本作品を発表すると、これが大ヒットします。

 合計100週間以上もチャート・インして、200万枚以上を売り上げるという大ヒットです。トップ5ヒットも3曲。イギリスではほとんど無視されましたが、日本では大いに人気でした。

 私は、リアル・タイムでこのLPを購入していたのですが、誰にも言いませんでした。パンクやニュー・ウェーブやプログレばかりを聴いていた20歳の頃ですからね。ちょっと友達には言えませんよね。松田聖子を持っているとは言えても、エア・サプライを持っているとは言えない。ひそかに聴いていたんです。

 ペパーミント・サウンドと呼ばれる激甘のポップスです。グラハム・ラッセルとより高い声のラッセル・ヒッチコックの二人のボーカルがからむ「ロスト・イン・ラブ」に、「オール・アウト・オブ・ラブ」、「ときめきの愛を」と冒頭から続く3曲は爽やかを絵に描いたような曲です。

 続く7曲もディスコ調あり、バラードありと変化もあるものの、どれもこれもくっきりしたメロディーのソフト・ロックです。サビもとてもはっきりしており、キャッチーでいい曲が並んでいます。

 当時はアダルト・オリエンテッド・ロック、AORがはやっていた頃で、彼らもその流れで売れたように言われますが、AORに特徴的だったジャジーなリズムは見られません。そもそもボーカルの二人以外はころころとメンバーが替わるバンドです。デュオにバック・バンドという感じですから、サウンドに対する気配りをプロデューサーに委ねた感じがします。

 とても歌謡曲的な成り立ちですよね。日本のニュー・ミュージックに似ていました。そこが当時の私の恥ずかしがりポイントだったわけです。なら買わなければいいわけですが、どうにも「ロスト・イン・ラブ」が頭を離れなくて、ふらふらと買ってしまったんですね。

 買っても聴かなければいいわけですが、つい聴いてしまう。久しぶりに聴き直してみたら、ほとんど覚えていました。まあ覚えやすいということもあるんですけれども。

 そういうわけで、何やら屈折した感情を持っているわけなんですが、もう今となっては恥ずかしがる必要もなく、懐かしく楽しめます。ラッセルの声は綺麗だし、こういうメロディーは結構古びないものですね。

 「ロスト・イン・ラブ」は本当にいい曲です。ひどいPVですけれども。

Lost In Love / Air Supply (1980)