$あれも聴きたいこれも聴きたい-EDPs 01 エディプスとEDP(エレクトロニック・データ・プロセシング)を掛けたバンド名です。何だか頭がいい感じがしますよね。最近はあまりEDPと言わなくなりましたけれども、83年当時は最先端の用語でした。

 エディプスはギリシャ悲劇の中で最も有名な人です。オイディプス王という名前の方がしっくりきますが、そこはやはりエディプス・コンプレックスの勝ちでしょう。父を殺し、母と結婚したオイディプス王は真実を知って絶望し、自らの眼を抉り出して追放されます。恐ろしや。

 EDPsの中心人物ツネマツマサトシ、通称まっちゃんは、芸大の油絵を描いていた人です。このジャケットは、そんな彼の作品「変容-牙」です。象と崩れゆく顔が合体した幽霊画のような絵画は、オイディプスのお話と相通じるものがあるように感じます。

 私は一度だけですが、ツネマツさんのステージを見たことがあります。EDPs結成前、日本のパンク・ニュー・ウェーブの最重要バンド、フリクションです。華奢な体つきですが、見るからに強面のまっちゃんは客を煽りながら、ギターを弾きまくっていました。よく言えばスライド・ギター、コードを押さえない奏法です。

 クールではありましたが、パンク的に客とのコミュニケーションがとれていました。それから比べると、EDPsは断絶があるように感じます。重厚なビートに乗せて、ツネマツのギターとボーカルが冴えわたるわけですが、とてもアートな雰囲気で、超然とした風景が現出しています。

 EDPsは三人組、ギターとボーカルの元フリクション、ツネマツマサトシ、ドラムスには元スピードのBOY、ベースには元チャンス・オペレーションのイデです。当時の東京アンダーグラウンド・シーンでは有名なバンドばかりですが、一般には知名度は低いでしょうね。アングラ・シーンにはよくある離合集散ということだけ知っていれば十分でしょう。

 ツネマツさんは、フリクション脱退後、ソロ活動を経て、EDPsを結成します。バンドが恋しくなったと言われていますが、このバンドはあまりバンド、バンドしていませんから、どうかなあと言う気がします。メンバー間のインターアクションはあっても、どこか荒涼としています。

 最小の構成で、ファンクっぽくもあり、ノイジーでもあり、オリエンタルでもあったり、多彩なんだけれどもモノクロームな世界が描かれます。しかし、どこかノリが日本的なんですよね。不思議なサウンドです。当たり前ではありますが、ハウス以降のダンス・ビートの洗礼を受けていないところも、今となっては妙な感じです。

 この頃は、日本のインディーズも定着してきて、層が厚くなってきていました。そんな中で、東京ロッカーズ勢は年齢も高かったこともあり、押しも押されもせぬ重鎮となっていました。若さ至上主義ですから、重鎮と言う言葉は素直に喜ぶわけにはいきません。

 どんどん新陳代謝が進む中で、このマッチャン率いるEDPsはベテラン勢の逆襲として、大御所感を醸し出していました。それだけ、充実した作品であったことは間違いありません。

Blue Sphinx / E.D.P.s (1983)