$あれも聴きたいこれも聴きたい-Mackerras ブラス・ロックじゃんと思ってしまいました。「シンフォニエッタ」の最初のパートはブラス・バンドのようです。かっこいいですね。どこかで聴いたことがあると思ったら、エマーソン、レイク&パーマーの「ナイフ・エッジ」の元歌だと言うではありませんか。へー。

 週に一度のクラシック・タイムです。今日は、チェコ生まれのレオシュ・ヤナーチェクの管弦楽曲「シンフォニエッタ」と狂詩曲「タラス・ブーリバ」です。演奏するのは、ヤナーチェクの再発見につながったと言われるオーストラリア人のチャールズ・マッケラス指揮、ウィーン・フィルハーモニーです。名盤のようですね。

 ヤナーチェクは、1854年生まれで1928年没。クラシックが華やかだった頃の人ですね。生まれは、モラヴィア、彼が生まれた当時はハンガリー王国の支配下にありましたが、1918年に千年の桎梏から解放され、晴れてチェコスロバキアとして独立を達成します。そんな時期に生きていたら、それは影響を受けるでしょうねえ。

 彼の音楽はモラヴィアの民族音楽を研究していく中から生まれたと言われています。民謡の精神に基づく音楽は、発話旋律と言われ、言語を旋律化したようなローカリティーがあると言われます。そのため、チェコ語を解さない人には演奏できないなんて言われたりしています。

 マッケラスは、オーストラリア人ですが、チェコに留学していた経験があるそうで、資格十分というところでしょうか。民謡そのままじゃないわけですから、チェコ文化に慣れ親しんだ外国人が演奏する方が、より構造がはっきりして魅力が増すということでしょうね。

 民族音楽から発想を得ているということが、形式を自由にしています。要するに伝統的な交響曲の構造をとっていないということです。まあ、もともと伝統的な交響曲の構造を知らない私にとっては、ああそうですかというしかない話ですが。

 「シンフォニエッタ」は小交響曲、「タラス・ブーリバ」は狂詩曲とされています。狂詩曲はデジタル大辞泉によれば、「自由な形式により、民族的または叙事的内容を表現した器楽曲、ラプソディー」ということです。「シンフォニエッタ」にもそのまま当てはまるようですが、何でそっちはそう呼ばれないのでしょうね。

 この二曲は、どちらも甲乙つけがたいですが、「シンフォニエッタ」の方が、村上春樹の小説で有名になった分だけポピュラーですかね。この曲は、26年に初演されています。チェコスロバキア陸軍に献呈するつもりだったということが十分首肯できる勇壮さです。

 特に最初の楽章の「ファンファーレ」はブラスとティンパニーだけで突っ走ります。その後は、飛び回るピッコロ(ですよね?)が魅力的だったりします。全部で25分くらい、「タラス・ブーリバ」もそれくらいですから、まるでLPを予期していたかのような収まりぶりです。

 クラシック的には曲の構造が掟破りだったのかもしれませんが、素人の私からみれば、飽きさせない工夫に満ちた素晴らしい構成です。モティーフが増殖していくと評されている通り、見事にまとまっていますしね。

 かなりプログレっぽいです。

Leos Janacek : Sinfonietta, Taras Bulba / Charles Mackerras, Wiener Philharmoniker (1981)