$あれも聴きたいこれも聴きたい-Karz 今日は久しぶりにインドから来た知人と食事をしてまいりました。日本に来るたびにおみやげを持ってきてくれます。インド人はとても義理堅いです。あまりこちらの趣味嗜好を気にしないおみやげなのですが、まあそれはご愛嬌。気持ちは嬉しいです。

 そんなインドな日なので、朝から典型的なインド映画音楽を聴いて一日を盛り上げました。以前、ご紹介した「カーズ」のオリジナル・バージョンです。あれは忠実なリメイクだったんですね。

 さらに、昔、ご紹介した「オーム・シャンティ・オーム」もこの映画の翻案ですから、どれだけ、このオリジナルがインド人の生活に深く根を下ろしているかが分かるというものです。

 音楽監督は、ラクシュミカント・ピャレラル。35年間で488本の映画音楽をつくった大人気の作曲家コンビです。そうなんです。コンビなんです。ラクシュミカントとピャレラルの二人組です。あまりの息の長さに、頭文字をとってLP、ロング・プレイングとの愛称を獲得しています。

 インドの映画音楽界では作曲家チームが活躍します。その代表選手が彼らですね。藤子不二雄とは違って、彼らの場合は、ラクシュミカントが作曲を担当し、ピャレラルが編曲を担当するという分業制度をとっています。ここらあたりが長続きの秘訣でしょうね。

 彼らの黄金期は63年から83年までと言われます。この「カーズ」は80年の作品ですから、全盛期後期の作品だということになります。その後は、インドの映画音楽全般が低迷期を迎え、彼らも例外ではありませんでした。そのため、大成功しているわりには、伝説の域に達することはありませんでした。残念です。

 この作品の中の一曲「ダルド・エ・ディル」は、彼らの特徴をよく表していると言えます。北インドの伝統歌謡ガザルを西洋のポップのフォーマットに乗せているんです。作曲と編曲を分業していることが良い方向に作用したんでしょう。彼らの折衷主義の面目躍如です。

 歌手はインドを代表する大歌手キショール・クマールが大半を歌っています。女声にはもちろんラタとアシャの姉妹。慣れれば味わい深い見事な歌唱です。そして、何よりもオーケストラですね。ボンベイ・ダブ・オーケストラは綺麗に過ぎました。こちらの低音質でひゅるひゅる鳴るストリングスは得も言われぬ味わいです。これが時々聴きたくなるんですよ。

 しかし、皆さんに言っておかなければならないことがあります。映画のテーマとなる輪廻転生を自覚するきっかけとなるメロディーを使った「エーク・ハシナ・ティ・エーク・ディヴァナ・タ」は、リメイク版の「カーズ」でも再演されているインド人の心の歌なんですが、何とこのメロディーは77年発表のジョージ・ベンソン「ウィー・アズ・ラヴ」そのままです。臆面もないパクリですねえ。何と言ってよいやら。

 そんなところも含めて、インドの熱気を感じてください。 

Karz / Laxmikant Pyarelal, Anand Bakshi (1980)



ジョージ・ベンソン