$あれも聴きたいこれも聴きたい-Ansermet マニュエル・デ・ファリャ・イ・マテウ。関西出身の皆様には、「いてまう」と読んでしまった私を笑う資格はないはずです。

 久しぶりのクラシックは、20世紀前半のスペインを代表する作曲家、いてまうファリャの有名なバレエ音楽です。有名と書きましたが、私にはもちろん初耳です。この曲は、これまた有名なディアギレフのロシア・バレエ団の依頼を受けて書かれた名曲です。

 当初は小編成のオーケストラのために書かれた曲でしたが、ディアギレフの助言もあって大オーケストラ用に書き直されて編集されました。その大編成版によるバレエの初演は、1919年、ヴェルサイユ条約の年ですね。舞台と衣装のデザインはピカソ、かっこいいですね。

 しかし、何よりも初演の指揮者がエルネスト・アンセルメというところが素晴らしい。このCDは61年にジュネーヴで録音されていますが、指揮者は同じアンセルメです。初演で棒を振った人の演奏をこうして聴けるというのは、凄いことです。坂本竜馬の声を聴くような感じですね。

 ファリャはスペインの民俗舞曲を積極的に取り入れた人で、国民主義とも呼ばれます。作風は後期には新古典主義に変化していくそうですから、この作品は国民主義の総決算でもあるようです。

 音楽を聴いていますと、踊りがありありと目に浮かぶようです。躍動感に満ち溢れていて、楽しいですね。スペインの舞曲のリズムなんでしょうか。リズムで聴かせる作品です。

 聴いていると、突然ベートーベンの「運命」が聞こえてきます。パロディーなんでしょう。他にも原曲は分かりませんが、引用しているのではないかと思われるところがあります。おそらく、笑いをとるポイントなんでしょう。洒落っ気があってなかなかいいですね。

 あらすじは粉屋の美人女房に横恋慕した代官が、粉屋を無実の罪に陥れますが、最後には皆の袋叩きにあってめでたしめでたし。吉本新喜劇な話ですね。その代官のかぶっている帽子が三角帽子、それがこの作品のタイトルになっています。

 とても下世話な話ですし、基本は民俗舞踊なわけで、庶民的な作品であるといえます。しかし、アンセルメの指揮は、躍動感はそのままにとても格調高くて気持ちが良いですね。何度も聴いているうちに、好きになってきました。

Falla : The Three Cornered Hat / Ernest Ansermet, L'Orchestre de la Suisse Romande, Teresa Berganza(soprano) (1962)