$あれも聴きたいこれも聴きたい-Haitink 同じ時代に生きていたというだけで妙に親しみを感じることがあります。ポピュラー音楽の場合は、同時代を前提としているので、当たり前のことですが、クラシックの場合は、文字通りクラシックなので、同時代性はポイントが高いです。

 ショスタコーヴィチの没年は1975年ですから、私が15歳の時です。若い人にとってはかなり昔でしょうが、私にとってはつい昨日のことです。まさに同時代の偉人。ついでに彼は結核にかかってもいましたから、私としてはますます親しみが増してきました。

 そんな柔らかな親しみでもって聴き始めますと、顔を洗って出直して来い、と言われたような気がしました。まあ当たり前ですが、とてもシリアスな音楽です。気難しい西洋の親父でしたね。同時代性などどこにもありませんでした。残るは結核のみ。

 ショスタコーヴィチは20世紀最大の作曲家の一人と言われています。戦争を含むスターリン時代のソ連を生き抜いた人なので、筋金入りのシリアスさが持ち味です。当時のソ連のイメージはとても暗い。まあ今でも暗いわけですが。

 この交響曲第5番は、「革命」という題名がつくことがありますが、どうやら通称のようです。ショスタコーヴィチはスターリンの粛清が吹き荒れる時代に、プラウダにて激烈な批判を浴び、自己批判の後に発表されたのがこの作品です。これを契機に名誉を回復するわけで、この作品については、本人も含めてさまざまな解釈が乱れ飛んでいますから、その中から付けたタイトルなんでしょうね。

 しかし、あまり革命という感じはしません。社会主義リアリズムを見事に表現していると言われますから、それと関係があるのかもしれません。しかし、社会主義リアリズムと言われても、今となっては、何のことだかぴんと来ませんね。社会主義は遠くなってしまいました。

 この作品は古典的な4楽章形式からなっていますし、静と動、明と暗、陰と陽の対比が際立つ、極めて分かりやすい作品です。ロシアの大地を感じさせる茫漠として陰鬱な空気をベースに、ふらふらと緊張が漂います。そうして、終楽章では盛大に盛り上がって終わります。質実剛健、巨艦主義、超大作です。

 どこかで聴いたと思ったら、「部長刑事」の主題曲なんですね。30年以上も。それに、阿部寛の「結婚できない男」でも使われていました。なんとポピュラーな。シリアスながら親しみやすい。私の一方的な気安さは排除しておきながら何という事でしょう。

 さて、演奏はベルナルド・ハイティンク指揮、コンセルトヘボウ管弦楽団です。ハイティンクは27年間もコンセルトヘボウの主席指揮者をやっていたんですね。いろんな人の交響曲全集を録音している人で、このショスタコーヴィチなども得意としているようです。

 このCDは、もの凄く録音がいいなあと思います。ストレートにまろやかな演奏を空気ごととらえた技術は素晴らしいものがあります。

 なかなか身が引き締まる作品です。どんどんクラシックに入門してきました。これもまた楽しいものです。

Shostakovich : Symphony No.5 / Bernard Haitink, Concertgebouw Orchestra (1982)