$あれも聴きたいこれも聴きたい-孫燕姿 言霊というのは恐ろしいものです。倉木麻衣さんのアルバム評をブログに載せた時に、デュエットしている孫燕姿さんのアルバムも聴いてみたいと書きました。

 表明された言説は真実になる運命になるんですね。初めて聴きたいと思ってから、もう10年近く実現していなかったことが、ここにこうして実現しました。まあ自分の腹一つではあるんですがね。

 孫燕姿、日本では英語名のステファニー・スンで呼ばれることが多いようです。「ようです」というのも、彼女のアルバムは日本での発売がないので、公式の呼び方が定まっていないんです。倉木麻衣さんとのデュエットで日本のファンにはなじみがあるにもかかわらず、発売されていない。残念です。

 名前の読み方は、スン・イェンツー。スンさんというのも何ですから、ここではステファニーとしましょう。漢字だと変換が大変だし。それで、ステファニーはシンガポール生まれの華人で、台湾を活動拠点とする女性歌手です。好きな色は黄色、ニコラス・ケイジのファンだそうです。長いこと更新はされていませんが、日本でもファン・サイトがあります

 2000年に21歳でデビューした際には、台湾とシンガポールで最優秀新人賞を受賞して注目を集めたということで、華々しいデビューだったんですね。その後、台湾を拠点に東南アジアや大陸で大いに人気を博し、これまで3000万枚以上のCDを売ったそうです。中華圏を代表する歌手と言えば、フェイ・ウォンがいますが、ステファニーは第二のフェイ・ウォンと呼ばれることもあるようです。

 そんなに人気があるのに、日本ではCDが発売されていないとはどういうことでしょう。日本の歌手が結構アジアで人気があるというのに、日本は閉鎖的ですね。韓流ブームがきっかけとなって、台湾や中国の音楽も普通に紹介されるようになるといいですね。

 さて、このアルバムですが、2011年4月に4年ぶりに発売された彼女の10作目です。カムバック・アルバムとされていて、HMVが阿漕なことをやって価格が高かったにもかかわらずヒット・チャートの首位を獲得したということで、まずまずの受け入れられ方でした。

 彼女の声は本当に素晴らしいと思います。硬質な細い声なんですが、しなやかで強い。体の中でこもらずにまっすぐ突き抜けてくる綺麗な声です。もちろん歌唱力もあり、表現力も豊かです。

 今のJ-ポップはダンス成分が強くなっています。それはそれでよいのですが、そういう中で、このようにシンプルに歌を聴かせる作品はとても新鮮に感じます。ストリングスやアコースティック楽器が歌に寄り添うように演奏されていて、歌が映えるんです。

 もちろん、世界は同時に進行しているので、普通にエレクトロ系の曲もありますが、それもシンプルなアレンジで格好いいです。ただ、ロック調の曲はちょっと古臭いアレンジかもしれません。

 ということで、とても聴きごたえのあるポップなアルバムです。中華ポップスもどんどん面白くなりそうです。ステファニーは一般人と結婚して、現在、妊娠中だそうです。出産後には、また一回り大きい姿を見せてほしいですね。

是時候 It's Time / 孫燕姿 (2011)