$あれも聴きたいこれも聴きたい-Zappa20
 「ボンゴ・フューリー」、発売当時の邦題「狂気のボンゴ」はフランク・ザッパ先生が高校時代からの友人キャプテン・ビーフハートと共演した作品です。ロック界に特異な足跡を残した二人が同じ高校に同時期に通っていたとは何と微笑ましいことでしょう。

 二人はリズム・アンド・ブルースが大好きだという共通項で意気投合し、毎日毎日、放課後に3時間も4時間もぶっ続けでレコードを聴いていたといいます。青春です。レコード番号当てクイズなんていうことをしていたそうですから、ものすごいマニアぶりがうかがえます。

 長じて二人ともロック界で大活躍し、ビーフハートの「トラウト・マスク・レプリカ」をザッパ先生がプロデュースするなど二人のコラボも実現していきます。しかし、いろいろなすれ違いが起こり、特にビーフハートが先生の悪口を公言するに至って二人は疎遠になりました。

 しかし、ビーフハートは突然ザッパ批判を封じて反省の弁を述べます。「僕が述べたことについてあやまるよ」、「自分で何を言ってたのか分からなかった」「フランクはグレートな奴だ」。こうして和解した二人の成果が一緒に行ったライヴであり、本作品になりました。

 ここまでは潔いのですが、残念ながらビーフハートは今度はザッパ先生のマネージャーを批判し始めたりして、結局元の木阿弥になってしまいました。幼馴染ならではの関係ともいえます。短い仲直り期間をとらえた本作品の貴重度が分かるというものです。

 本作品の大半は1975年5月20日と21日の両日、テキサスで行われたライヴからの音源です。ここでのマザーズは前作とほぼ同じメンバーですが、ドラムがテリー・ボジオになりました。やんちゃなロック小僧ですから、サウンドが元気になった気がします。

 このライヴからの曲は、ビーフハートのえぐいボーカルがさく裂する曲が何曲かあり、背筋がぞくぞくします。とりわけビーフハート自身の曲となっているおどろおどろしい語り風の2曲は恐ろしい。帽子で顔の上半分が見えないジャケ写そのままの恐怖です。

 ザッパ先生のボーカルが映える「キャロライナ・ハードコア・エクスタシー」や、ナポレオン・マーフィー・ブロックとジョージ・デュークの掛け合いが見事な「アドヴァンス・ロマンス」などマザーズよりの曲も印象深いです。ビーフハートの存在がブルースを連れて来たかのようです。

 そして名曲「マフィン・マン」の存在です。このボーカル・メロディーが本当に素晴らしいですし、先生のギター・ソロも最高です。くるくる回りながら上昇していくフレーズはバッハのオルガン曲のようですし、ビーフハートのコーラスも最高です。もっと長く聴いていたかった。

 さすがに大傑作だった前作ほどの隙のないアルバム構成とはいきませんが、ビーフハートが持ち込んだ「マッドネス」はマザーズのサウンドにエッジをたてており、これはこれで傑作であろうと思います。なおまだマザーズの名前は細々と続いていました。失礼しました。

 なお、このステージではビーフハートが「拷問は果てしなく」を歌っています。後に発表されますが、本作に入れて欲しかったと思いました。また、日本ではこのアルバムは来日記念盤となっています。見てみたかったコンサートのナンバー1です。

Bongo Fury / Frank Zappa, Captain Beefheart, Mothers (1976 DiscReet) #021

*2012年10月18日の記事を書き直しました。



Tracks:
01. Debra Kaabra
02. Carolina Hard-Core Ecstasy
03. Sam With The Showing Scalp Flat Top 角刈りのサム
04. Poofter's Froth Wyoming Plans Ahead ワイオミングの街の二百年祭
05. 200 Years Old
06. Cucamonga
07. Advance Romance
08. Man With The Woman Head
09. Muffin Man

Personnel:
Frank Zappa : lead guitar, vocals
Captain Beefheart : harp, vocals, shopping bags
George Duke : keyboards, vocals
Napoleon Murphy Brock : sax, vocals
Bruce Fowler : trombone, fantastic dancing
Tom Fowler : bass, also dancing
Denny Walley : slide guitar, vocals
Terry Bozzio : drums, moisture
Chester Thompson : drums