$あれも聴きたいこれも聴きたい-ももいろクローバーZ 「ロック・ファンの皆さん、目を覚ましてください!!」。ももクロです。

 ももクロは、依然快調に飛ばしています。先日も武道館ライブなんてやったようですね。全国の家電量販店でのライブから地道に登ってくるという、下積みの長いアイドルですし、AKBやハロプロ勢に比べると、微妙に大人受けするアイドルです。

 それを逆手にとって、本人たちはあまり思い入れはないようですが、プロレス・ネタを織り込んだり、ロック・バンドと対バンしたり、昭和人をゲストに呼んだりと狼藉の限りをつくしています。そんな姿勢が受けるのか、ちびっこにも人気があるという面白い人たちです。

 インタビューを見ていると、実に天真爛漫、ぐずぐずでまとまりがあるんだか無いんだか、訳が分かりません。でも、もはや、自分の子どもよりも若い世代ですから、それでいいんだと思います。年寄りに簡単に理解されても困るでしょう。

 このアルバムは彼女たちのファースト・アルバムです。最近、ヴァラエティーでよく見かけるヒャダインこと前山田健一が全部音楽を担当しているのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。彼の曲は4.5曲しかありません。それでも存在感は抜群で、飛びぬけて面白い曲が多いです。

 他の人の曲もそれなりに面白いのですけれども、普通のアイドルっぽい。NARASAKIの「天手力男」などは、タブラとシタールを使って粘り気たっぷり、いい感じの変な曲ではあるものの、想定内です。ただ、日本も古代の話になると自然にインドが出てくるのは面白いですね。

 ヒャダインの曲は、ちょっとづつ、あれっと思わせるところがあって面白いです。ももクロとともに徹底的に好きなことをやってみるんだという意気込みが感じられます。それに何より楽しい。ももクロの5人は色気がまるでない。それをとことんまで生かした作品になっていると思います。

 担当ディレクターの宮本さんによれば、ももクロへの楽曲選択の基準は、「単純ですが『メロディの強さ』。サビは問答無用で『これだ!』といわせるような、黄金のメロディであるようにしています」(CDジャーナル11年8月号)そうです。なるほど耳につきますね。

 さらに「低音の効かせ方にこだわっているつもりです」ということです。確かにボーカルが前に出てくるアイドル仕様にしては、耳に優しい気がします。歳をとると、女の子の高いきんきん声は厳しいのですが、これはそれほどでもありません。なるほど、なるほど。

 ベスト・トラックは、「ももクロの日本万歳!」でしょうか。日本中の名物を歌っていくだけという徹底的にナンセンスな歌で、大変結構。こういうのがいいですねえ。

 最近のアイドルは歌がうまい、というか音程がしっかりしていると思っていたのですが、直すんだそうですね。テクノロジーの発達はすごいものがあります。前山田さんによれば、直さないと世間に受け入れられないようです。アイドルなんだからヘタでもいいじゃないかと思います。ちょっとそこが残念ですね。

Battle And Romance / ももいろクローバーZ (2011)