$あれも聴きたいこれも聴きたい-Jade Warrior ジャケットには漢字が書いてあります。誰が書いたか書いていないのですが、ジャケットの絵は浮世絵風です。バンド名は侍のことだという説もあります。他の作品では侍がジャケットに出てきますから、よほど日本びいきなんでしょうね。

 ジェイド・ウォリアーは、英国のサイケデリック・プログレッシブ・バンドです。結成したのは60年代の終わり頃のようですが、メンバーはそれまで様々な音楽活動をしていたようで、一緒にやっていた仲間には、後にロック・シーンに名前を残す人たちもちらほら見られます。

 このアルバムは、彼らのデビュー・アルバムで、71年に発表されました。メンバーはパーカッションとフルートのジョン・フィールド、ギターのトニー・デューイグ、ベースのグリン・ハーヴァードの3人で、3人ともボーカルもとります。ドラムがいませんね。2作目以降はドラムスが入りますから、このデビュー盤だけの編成です。

 ドラムがいないというのが、大きなポイントです。それにキーボードもありません。ギター、ベース、フルートにボーカルが基本です。ドラムの代わりに叩かれるのは、タブラやコンガなど非西洋のパーカッションです。その編成でサイケデリックでアンビエントな音楽を奏でてきます。

 面白いことに、彼らはアフロ・ロックのバンド、アサガイと一緒に活動していまして、このアルバムにはアサガイにも提供した「テレフォン・ガール」を収録していますし、「マサイ・モーニング」なんていうアフリカの風景を描いた楽曲も収めています。エスニックな匂いを漂わせているわけです。

 アサガイは彼らを助けます。ジェイド・ウォリアーはヴァーティゴ・レコードと契約を結んで、このデビュー盤発売にこぎつけるわけですが、実はヴァーティゴは大して彼らのことを気に入っておらず、アサガイと契約するついで、というかバーターで契約できたんだということです。アフリカは重要です。

 ライナー・ノーツによれば、もともと、フィールドは「小さいころから映画音楽が好きだった。また、アフリカン・ミュージックにも興味を持っていた」と語っています。さらに、「それがハリウッド産のアフロ・ロックと気づいたのはもっと後だったけどね」と付け加えます。

 ここはポイントでしょう。「ハリウッド産のアフロ・ロック」。彼らの音楽には、ラテンの香りもしますし、ジャケットに見られるがごとく、オリエンタルな匂いも漂います。轟音ギターのロック、サイケデリック、ジャズと様々な影響が垣間見えます。しかし、それらが全てハリウッドのフィルターを通した映画音楽のようなものなんでしょう。2次的な感じがします。

 ワンクッション入る分、非現実感が強いんです。ぽっかり空いた心象風景。ブランクなスクリーンに映る様々な音像が2次元で展開する。そんな彼らの音楽はとても不思議です。

 彼らは今も現役で活動しています。立派なものです。

Jade Warrior / Jade Warrior (1971)