$あれも聴きたいこれも聴きたい-Jam 06 80歳になっても青春真っ只中だと嘯くじいさんもいますが、一般的には青春には終わりがあります。そこにはそれぞれに何か具体的な出来事があるのでしょう、そんな出来事とともに胸がうずくものです。

 ジャムの、と言いますか、ポール・ウェラーの青春はここで終わったと言っていいでしょう。この作品はジャムの最後の作品になりました。ぼろぼろになって辞めたのではなく、まさしく人気絶頂の時に、潔く幕が引かれました。最後までかっこいいジャムでした。

 ジャムのコンサートは素晴らしいと評判でした。日本公演もありましたが、ほとんどの人が絶賛していました。最高のライブ・バンドとしての評価も得ていたわけです。そこでのサウンドはレコードとは違ってストレートなものだったようです。

 レコードでも頑張っていましたが、そのライブの魅力をなかなかレコードでは再現できないと言われていました。そのため、レコードはどんどん実験的になっていったのかもしれませんね。ある種の開き直り。

 この最後の作品では、ブラスの全面的な導入がまず目を惹きます。それに、モータウン趣味全開のファンキーが際立ちます。さらにカリプソまで取り入れるというカラフルなサウンドになっています。それでも全体のスピード感は失われず、ジャムらしさを保った作品です。

 しかし、どうしても聴き手としては、ストレートなジャム・サウンドを探してしまうところがあります。聴き手と演奏者のこうした微妙な食い違いは白アリのようにバンドを蝕んでいくのでしょうね。バンド・メンバーの関係も徐々に変質してきたように感じます。

 日本ではブルース・フォクストンのベースは高い評価を得ていますし、私も彼のマシンガン・ベースは好きですが、このアルバムのファンク系の曲での彼のベースは居心地が悪そうな感じがします。彼は本当にソウルが好きなんでしょうか、疑問に思います。

 ジャムはこのアルバム制作の前に、デビュー以来初めてまとまった休みをとっています。ブルースとドラムのリックは旧友に会いに出かけた一方で、ポール・ウェラーはロンドンのクラブを徘徊してディープなソウル音楽への興味を掻き立てられたということです。

 その成果はこのアルバムに十二分に反映されていますが、結果的にはこの休暇がバンドの解散につながっていったのでしょうね。アルバム制作後、ポールはロック・バンドであることに苛立ちを隠せなくなり、イタリアで休暇を過ごした後、解散を発表します。わずかに24歳。青春真っただ中で全力疾走している時に、休みをとるとろくなことがありませんね。

 こうしてジャムは終わりました。思えば、ジャムのサウンドは今から振り返ればとてもパンクらしいものでした。私は初めてブルー・ハーツを聴いた時にジャムを思い出しましたし、グリーン・デイに最も親和性の高い英国パンクはジャムでしょう。後に確立して今に続くポップ系のパンク・サウンドの祖形はジャムにあるのではないかと思います。

 とても青春なバンドでした。そんなジャムの絶頂を表した素晴らしい作品を聴きながら、合掌したいと思います。

The Gift / The Jam (1982)