$あれも聴きたいこれも聴きたい-Donna Summer 洋楽界の三大女王と言えば、ソウルの女王アレサ・フランクリン、ポップの女王マドンナとディスコの女王ドナ・サマーです。日本では、Jポップの女王浜崎あゆみや演歌の女王八代亜紀、川柳の女王山村紅葉とかいろいろ思いつきますが、定番ではないようです。

 ドナ・サマーは2012年5月に亡くなりましたが、その際、オバマ大統領からも哀悼の意が表明されました。その中で、「ドナこそ真の意味でのクイーン・オブ・ディスコだ」とお墨付きが与えられています。これはもうそういうことでしょう。

 70年代末は、それこそ右を向いても左を向いてもディスコ音楽ばかりでした。それに、匿名に近いようなグループも多数あって、普通の洋楽シーンとは少し異なる様相を呈していました。ソウル・ミュージックを洗濯機にかけて、グルーブやら何やらを全部洗い流したような音楽でした。

 一分間に120ビート、120BPMくらいの心臓に近いビートが延々と刻まれていく、そのサウンドは単調と言えば単調、魔術的と言えば魔術的。その境目はとても微妙でした。

 私はディスコには2,3回行ったことがあるだけで、ほとんど門外漢でした。音楽もそれほど熱心には聴いていませんでしたが、さすがにドナ・サマーはよく知っています。

 なんたって、この頃のドナ・サマーは凄かった。この2枚組アルバムは6週間連続全米1位となり、さらに「ホット・スタッフ」と「バッド・ガール」を続けざまにナンバー1にしました。特に「ホット・スタッフ」は、ディスコそのものです。テレビでディスコを紹介するときには必ず後ろに流されています。

 ドナ・サマーはゴスペルにルーツがあるらしいですが、R&Bサーキットではなく、ミュージカルで世に出ました。ここが普通のブラック・ミュージックとは大きく違うところです。さらに、ミュージカルも欧州での公演で活躍したわけで、そんな彼女が出会ったのがイタリアのシンセサイザーの大家ジョルジオ・モロダーです。

 モロダーのプロデュースを得たミュンヘン・サウンドは、ドナ・サマーを大ブレークさせ、世界中にディスコ音楽を広めることになりました。モロダーはディスコの父と呼ばれます。人力ディスコ・ビートに変なシンセが特徴ですね。

 ドナ・サマーはそんなサウンドに乗って、ボカロのように歌っています。ソウルの女性歌手とは違って、すっとしてるんですね。このアルバムの前にはお色気ソングも歌っているのですが、やはりミュージカル的です。

 久しぶりにじっくり聴きましたが、脳内に快感ホルモンが分泌されて、大そう気持ち良く聴けました。のちにクラブ系音楽に進化する快楽のための音楽です。これはこれで面白い。

Bad Girls / Donna Summer (1979)