$あれも聴きたいこれも聴きたい-Jam 02 「女にうつつをぬかしていると、受験に失敗するぞ」、なんて言われたことはありませんか。でも、30歳を過ぎたりすると、「彼女の一人もおらんで、仕事なんかできよっとね」と言われます。分水嶺はどこにあるんでしょうね。

 これは、ジャムのセカンド・アルバムです。このアルバムは、チャート的にはキャリアの中で最も成功しなかったアルバムです。デビュー作からわずか半年で発表されたため、金儲けだと批判されもしましたし、アルバムの出来そのものも、まとまりがない、と評論家からは酷評され、メンバー自身もあまり好きではないようです。

 何でそんなことになってしまったのか。フロント・マンのポール・ウェラーが、女にうつつをぬかしたからです。プロデューサーのクリス・パリーによれば、「突然、彼女が現れたんだ。バンドはそれまで三人の若者だったのに、その時から二人の若者対ポールと彼女に分かれてしまって、物事が変わってしまったんだ」ということです。

 以後、しばらくポールはバンドの仲間から離れてしまい、明らかに集中を欠いたんだと言います。まだ19歳ですからね。一途に純粋な恋に走ったんでしょう。大きな仕事をするには、男女交際はまだ早かったということでしょうか。青春第二章ですね。

 一方、何で拙速に二枚目を出したかというと、マネージャーであるポールのお父さんに原因がありそうです。レコード会社とのディールの関係で結構な額のお金をもらってしまったため、とにかく急がせたということです。ライブ・アルバムにしようという考えもあったそうですが、録音したテープはなぜかお蔵入りとなり、このアルバムが制作されました。

 このようにダメな理由はいくらでも見つかるのですが、ジャムのキャリアの中では中途半端だとしても、そこまでひどいアルバムというわけではありませんから、結構、このアルバムのファンがいたりもします。

 デビュー・アルバムは勢いがありました。それまでに培ってきたもの全てを詰め込んでがむしゃらに作ったアルバムでした。しかし、その勢いはそのままでは長くは続きません。赤ん坊も歯が生え始めるとむずがるものです。ジャムも歯が生え始めたようです。

 このアルバムに収められた曲は、歯が生えそろわない赤ん坊のような感じがします。勢いだけのパンクな曲ばかりではなく、アコースティックなタッチも現れますし、ポール・ウェラーが唯一学校時代興味を持っていた詩からいくつか引用したりと詩作も幅が出てきました。ベースのブルース・フォクストンも2曲を提供していますし、ソウルの巨人ウィルソン・ピケットの「ミッドナイト・アワー」のカバーもあります。

 ジャケットはジミヘンの写真で有名なロック写真家ジェレド・マンコヴィッツですが、あんまりぱっとしません。裏ジャケは彼らのステージ写真でこっちの方も今一つです。気合がからまわりしているかのようです。

 聴いていて悪くはないのですが、確かにあまり印象に残らないアルバムです。紙ジャケ発売時に勢いで買ってしまいましたが、そういえばこのLPは持っていませんでしたし、あまり聴いたこともありませんでした。

 まあキャリアの中にこういう作品があってもいいでしょう。メンバーにとっては、彼女の思い出とともにあるアルバムかもしれませんね。

This Is The Modern World / The Jam (1977)