$あれも聴きたいこれも聴きたい-Georg Solti 02 「千人の交響曲」とは大きく出たものです。実際には1000人も係っていないわけですから、白髪三千丈のような盛った表現です。マーラー自身の表現ではなくて、初演時の興行主の表現だと言います。昔から名コピーライターがいたものです。

 えっ、何ですって?初演の時は実際に1000人以上いたと。そりゃ失礼しました。そうですか。1000人。しかし、興行としては大変なことになりますね。2000人収容の会場で一人1万円とったとしても、単純に頭割りすると一人2万円、一日8時間の練習を7日間こなしたとすると、何と時給400円足らず。当然取り分は3分の1にも満たないでしょうから、大変です。

 麻辣、しつこくこの変換が出てきますね。それはさておきマーラーの交響曲第8番です。ゲオルグ・ショルティ指揮、シカゴ交響楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団 ウィーン楽友協会合唱団 ウィーン少年合唱団、それにソロで歌う歌手が8人。1000人とはいきませんが、大所帯です。

 この盤は決定的な名盤と言われています。ネットで見ると讃辞の嵐です。熱く語る人が多い。クラシックの場合は語り部があまたいらっしゃるので、私のような者にブログを書く資格があるのかと、だんだん落ち込んできますね。

 それに今日は調子が悪かったのか、全然、気合が入りませんでした。デッカの技術の粋を尽くした素晴らしい録音だと言うのはよく分かるのですが、合唱苦手ですわ。やっぱり私。何といっても長い。全部で約80分。レコードでは2枚組、CDではぎりぎり1枚に収まる長さです。

 有名なマーラーの手紙には「私が書いた最大の作品であるばかりでなく、内容・形式ともに類のないものなので言葉では言い表せません。宇宙が震え鳴り響くさまを想像してください。それはもはや人間の声ではなく、惑星や太陽のそれなのです。」と熱い言葉が並んでいます。

 スケールは壮大です。二部構成で、第二部はゲーテの「ファウスト」から歌詞をとっています。ドイツの精神、ここに極まれりというところでしょうか。胸を熱くするものがありますね。

 ただ、先ほども申し上げた通り、あまり入り込めませんでした。1000人もの人を意のままに操るという行為自体があまり好きではないんですよね。私。マス・ゲーム、団体行動。息苦しい。強靭な精神に押しつぶされそうな気がしてきます。

 旋律は結構美しいんですけれども、どこかよそよそしい。そう思い出すと、合唱団の歌声っていうのはどんどん人の世から遠ざかって行くように聴こえてきました。

 クラシック入門も簡単ではありませんね。

Mahler: Symphony No.8 / Georg Solti, Chicago Symphony Orchestra (1972)