$あれも聴きたいこれも聴きたい-Grand Funk Railroad 06
  こりゃまた大そうな題名をつけたものです。日本のレコード会社もさすがに原題だけを訳して使うのははばかられたのでしょう、原題はカッコ内に入れて、「ハード・ロック野郎」なんていう原題の雰囲気を少し残した邦題がつきました。

 変なジャケットですが、ここでのトリビア・ポイントを申し上げますと、赤パンツか青パンツかは分からないものの、メンバーの顔が合成された体の一人はシュワちゃん、アーノルド・シュワルツネッガーです。当時はミスター・オリンピアとして肉体美を披露していたんです。

 このアルバムもこれまで同様全米トップ10入りしました。しかし、これ以降のアルバムはトプ10入りを逃してしまいますから、グランド・ファンクの最後の輝きのように捉えられがちです。シングル・ヒットもこのアルバムからの曲が最後です。

 グランド・ファンクにとって10枚目のアルバムとなります。デビューからわずかに5年で10枚のアルバムというのはロックには珍しい。昔の歌謡アイドルのような発売ペースだと言えます。彼らもアイドル同様、レコード会社の意向に素直に従っているように思われていました。

 しかも、今回はプロデューサーとして、ベイ・シティー・ローラーズなども担当するジミー・イエガーというポップ畑の人をあてがわれました。どこまでがバンドの意思だったのかはよく分かりませんが、トッド・ラングレン以上に意外な人選でした。狙いに来たかと。

 ただし、彼らの場合は全く会社の操り人形感はしません。そんなことは些細なことだといわんばかりのワイルドさ。このアルバムにはそのものずばり「ワイルド」という曲まであります。呵呵大笑。脳天から空へ突き抜ける脳天気さが大きな魅力でした。

 このアルバムは、前作、前々作のポップ加減を引き継いでいます。特にブラスの多用が目立ちます。一方で、おどろおどろ系の激しい曲もあり、なかなか飽きない作りになっています。悪くはない、と誰もが思うわけですが、では凄いかと問われると、考え込んでしまいます。

 ただ、ガンズ・アンド・ローゼズのアクセル・ローズも好きだという「バッド・タイム」は素晴らしい曲です。私はグランド・ファンクの曲の中で一二を争う名曲だと思います。マーク・ファーナーお得意の節回しが極まったしなやかなポップ調のロックです。

 これまで随所に見られたマークのポップなメロディーのエッセンスがつまっています。ここはイエナ―とのコラボが見事につぼにはまりました。もうちょっと聴きたいと思わせるちょうど良い短さといい、コンパクトにきゅっとまとまったのはイエナーあればこそ。

 もう一曲、シングル・ヒットしたのは「サム・カインド・オブ・ワンダフル」です。1967年のソウル・ブラザーズ・シックスによる曲をカバーしました。このカバーセンスも相変わらず見事で、こちらは全米3位のスマッシュ・ヒットです。

 悪くはない。むしろ、個々の曲の質は上がっているのだと思いますが、洗練されればされたで、彼らの魅力にとってはさほどプラスに働かないところが残念です。そういう意味では変なバンドです。過去を全部忘れてしまえば、これはこれでいいアルバムなんですが。

Rewritten on 2018/10/8

All The Girls In The World Beware!!! / Grand Funk (1974 Capitol)