$あれも聴きたいこれも聴きたい-Grand Funk Railroad 05
 少し前ならば、スマップのソフトバンクCM、もうちょっと前ならばオレンジ・レンジの「ロコローション」と、30年以上たった今も、グランド・ファンクが歌った「ロコモーション」は輝きを放っています。記憶に残る名曲、名演でした。

 この曲は、キャロル・キングとジェリー・ゴフィン夫妻という稀代のヒットメーカーが作り、1962年に夫妻のベビーシッターだったリトル・エヴァが歌って全米1位を獲得しました。グランド・ファンクが1974年に1位、カイリー・ミノーグが1988年に3位。恐ろしい名曲です。

 並べてみると分かるとおり、グランド・ファンクだけ異質。もともとポップ・ソングで、日本では伊東ゆかりがカバーしています。それを世界一やかましいハード・ロックのバンドがカバーするということ自体が驚きでした。お遊びと思いきや、聴いてびっくり。最高の出来でした。

 ちなみに友人のやっていたロック・バンドがピンクレディーの「渚のシンドバッド」を文化祭で演奏した時もびっくりしました。彼らのレパートリーだったツェッペリンのナンバーよりずっとよかったです。お遊び意識で適度にリラックスできるものなんでしょう。

 このグランド・ファンクによる「ロコ・モーション」は格別です。ドン・ブリューワーの重いドラムと、マーク・ファーナーのヘビーなギターに楽しげなボーカルの節回しは素晴らしい。それにこの曲の魅力を決定づけているメル・サッチャーのベース。凄い。

 当時、中学生だった私はシングル盤を買って、それこそ百回は聴きましたね。「アメリカン・バンド」とこの曲をとっかえひっかえ聴いておりました。そうして、グランド・ファンクの名前は私の心に深く深く刻まれたのでした。

 アルバムはロック界初の3Dジャケットという触れ込みでした。今の3Dと異なり、赤と青のセロファン眼鏡を使って見るという、頑張って見れば3Dに見えなくもないというなんちゃって3Dでした。当時、漫画雑誌の付録によくついていました。

 このジャケットには切り取れる眼鏡もついていて、それを切り取るかどうかは中学生には重すぎる選択でした。まあ切り取りませんね。当時は雑誌の付録についていた立体眼鏡をけっこう持っていたものです。あまり定かではありませんが、3Dに見えた記憶はありません。

 中身の紹介を忘れていました。このアルバムは前作同様に鬼才トッド・ラングレンのプロデュースによる起死回生第二弾です。ヘビーな音像は残しながらもポップな感覚が溢れていて、傑作になっています。「ロコ・モーション」」以外の曲も結構素晴らしいです。

 初期の頃との明らかな違いは、新メンバーによるキーボードの活躍と、何よりもドン・ブリューワーの成長ぶりです。もともとドラムには定評がありましたが、このアルバムでは半分くらいリード・ボーカルをとっていますし、曲も書いています。

 明らかな欠陥は、彼らのアルバムあるあるですが、短すぎることでしょう。わずか33分。後2曲くらい欲しかったと思います。再発CDではボートラがあるので、それがちょうど埋め合わせになっています。リミックスで「シャイニン・オン」の名曲ぶりも再認識しましたし。

Rewritten on 2018/10/8

Shinin' On / Grand Funk (1974 Capitol)