$あれも聴きたいこれも聴きたい-黛ジュン とても恥ずかしいことを告白しますが、私は小学校の低学年の頃、結構真剣に黛ジュンさんと結婚したいと思っていました。彼女もまだ二十歳前後だった頃でしたが、私には大人の色香をむんむんさせる背徳の美女に見えたものです。今でも、当時のビデオをみるとどきどきします。おお恥ずかしい。

 オアシスの誘惑を振り切るには、天使の誘惑が必要だというわけで、今日は黛ジュンさんです。この作品は、「天使の誘惑」が日本レコード大賞を受賞したことを記念して発売されたアルバムです。冒頭には、ジュンさんからのありがとうメッセージを込めたナレーションが入っています。

 それにしても「天使の誘惑」はいい歌です。作詞はなかにし礼、作曲と編曲は鈴木邦彦、後に大御所となりますが、当時はまだ若手のコンビでした。気鋭の二人によるハワイアン・ムードの傑作です。本当にいい歌ですね。

 この作品の出た時期は、グループ・サウンズ全盛期の少し後で、奥村チヨや渚ゆう子などのポップスを歌う歌姫たちが台頭した時期です。これが一段落すると天地真理に代表されるアイドル全盛期を迎えることになります。このあたり、厳密につめていくと時代考証に難がありそうですが、気分的にはこうだったんです。

 歌姫とアイドル。黛ジュンと天地真理の二人を並べてみても分からないと思いますが、二人は大きく違います。女性ポップスが子供向けになる前と後、カワイイ文化が芽生える前と後、かなり本質的にベクトルが違うのだと思います。黛ジュンや奥村チヨの活躍していた時の年齢は20歳前後ですから、今のアイドルとそれほど変わりません。しかし、カワイイ文化は一般的ではなかったので、かなり大人っぽく見せる努力をしていたと思います。そこがアイドルとは違うところです。

 と思っていたのですが、ビデオを見てみると、ユーチューブのコメントにもある通り、意外と前田敦子に感じが似ていますね。歳もほぼ同じです。そう言えば子ども子どもしていたハロプロとAKBの一部はかなり違う感じもします。時代は一回りしたのかもしれません。

 それはさておき、このアルバムはなかなかどうしていい感じです。まず演奏がいいです。特にリズム隊とギターの音色。「八木節」やら「ダンス天国」のグルーブはかなり聴きごたえがあります。この当時の特有の艶っぽい音なんですね。

 黛ジュンさんの歌もとてもうまい。改めて聴いておりますと、R&Bテイストが横溢していて、これもまたどきどきするほど艶っぽい。声に張りがあるし、何といってもリズム感が素晴らしい。洋楽のカバーから演歌っぽい歌まで何でもこなせる器用な人ですが、器用なだけにアルバムとなるとどうしても演歌っぽい曲を入れないと気がすまないのでしょうかね。レコード会社は。そういう演歌っぽい曲になると、途端にアレンジもつまらない。オーケストレーションが時代を感じるのが悲しいです。選曲を工夫してアルバムをつくってくれるとありがたいですね。フリー・ソウルでやらないでしょうか?

 このアルバムの中では「ブラック・ルーム」が一人グループサウンズの名曲として再評価されているそうです。確かにモロにグループサウンズ調です。GSには女性ボーカルで目立つ人がいませんでしたが、黛ジュンがバンドを率いていれば、その後の歌謡界にも違う展開があったかもしれませんね。

天使の誘惑 / 黛ジュン (1969)

超名曲。


不思議な歌ですが、いいですね。


主演映画のワンシーン。失神バンドのオックスが競演しています。