$あれも聴きたいこれも聴きたい-Benjamin Britten 軽い気持ちで聴きだしたのがよくありませんでした。重い作品です。81分にわたって、戦争を考えさせられることになります。レクイエムと名がつく作品には要注意です。ブリテンだからオリンピックつながりだと...。

 週に1度のクラシック・タイムです。本格的な歌曲は初めてかもしれません。食わず嫌いといいますか、昔からオペラとか苦手ですから、気を引き締めて聴くべきでしたが、歌曲と知らずに聴き始めたという情けない私がここにいます。

 ベンジャミン・ブリテンは現代英国を代表する作曲家です。13年生まれの76年没ですから、戦争を生きた人です。良心的兵役拒否をした徹底的な反戦主義者です。これは気骨にあふれる行為ですね。素晴らしい。

 ブリテンの作品は、これまで「青少年のための管弦楽入門」を聴いたことがあります。クラシック入門を志した大学時代のことです。現代音楽には少し入れ込んだのですが、ブリテンの名前を現代音楽の文脈で目にすることはありませんでした。保守的な人なんですね。これもまた潔いことこの上ありません。

 この作品は、英国コベントリーにある聖マイケル教会の委嘱によって書かれたブリテンの集大成とも言われる作品です。初演は62年です。しかし、当初想定していたソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシュネフスカヤが参加しておらず、63年にロンドンのキングスウェイ・ホールで録音したこの盤の録音の方が有名です。

 指揮は自身が行い、ソプラノにはヴィシュネフスカヤ、テナーが彼の盟友ピーター・ピアーズ、バリトンが素敵な名前のディートリッヒ・フィッシャー=ディスカウの歌手陣です。これに混成合唱と少年合唱、室内オーケストラにロンドン交響楽団が加わっています。

 この演奏は、デッカ・レーベルの録音陣の技術の粋を極めた17本のマイクによって録音されました。今でもその素晴らしい技術は語り草になっています。ロックなんかに比べると録音はけた違いに難しいでしょうからね。

 曲は、6つの部分に分かれていて、ソプラノと合唱団が通常のレクイエムに用いられるラテン語の典礼文を歌い、テノールとバリトンがイギリスの詩人、ウィルフレッド・オーウェンの英語による反戦詩を歌うというドラマチックな構成になっています。

 派手派手しく盛り上がることはなく、80分にわたって荘厳な調子が続きます。実際、生演奏を聴くと大変でしょうね。息苦しくなりそうです。シンプルなジャケットそのままに、戦争の愚かさを切々と訴えかけてくるわけですから大変です。

 初めての歌曲でしたが、ソプラノ独唱はなかなかいいなあと思いました。それに何よりも少年合唱団の美しさに目を開かされたことは収穫でした。特に最後の曲あたりは天にも昇る美しさ。これはいいんじゃないでしょうか。録音も本当に素晴らしい。結局、少年合唱団を追いかけていた80分でした。

 子どもの頃の日本の定番ウィーン少年合唱団を見ておけばよかったと思いました。
 
War Requiem / Benjamin Britten, Galina Vishnevskaya, Peter Pears, Dietrich Fischer-Dieskau, The Bach Choir, London Symphony Orchestra, Highgate School Choir (1963)