$あれも聴きたいこれも聴きたい-Himesh reshammiya なでしこは残念でした。でもいい試合でしたね。大きな期待の重圧の中で、素晴らしい結果だと思います。素直に拍手を送りたい。

 その女子サッカーの決勝戦はサッカーの聖地、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われました。ご存知の方も多いでしょうが、ウェンブリー・スタジアム及び隣接するウェンブリー・アリーナはポピュラー音楽にとっても聖地です。

 ご紹介するヒメーシュ・ラシャミヤは、2006年にインド人として初めてウェンブリー・スタジアムで演奏しました。凄いですね。インド系住民の多いイギリスですが、これは快挙でしょう。

 ヒメーシュ・ラシャミヤはボリウッドのサウンド・プロデューサーですが、この人は歌も自分で歌うし、映画に主演もします。この作品は映画「カーズ」のサントラで、彼が音楽を担当して、主演もしています。シンガー・ソング・ライター・アクターです。

 しかし、映画そのものは、過去の同名映画のリメイクで、大いに話題になったものの見事にこけました。映画がこけることはよくありますが、この人の場合は、ざまあみろ的な書かれ方が多かったことを覚えています。上品な書き方はしてありますが、はげだの不細工だの歌手の分際で映画に出演なんかするからだという意見がありありとしていました。

 ヒメーシュは73年生まれで、16歳の時に国営テレビなどに番組を提供していたプロダクションに入ったことからキャリアが始まりました。その後、映画音楽界で名を上げ、今では押しも押されもせぬ音楽家の一人です。1年に36曲をヒットさせたという記録を持っています。

 もともとメディアとの折り合いは悪いようで、何かにつけてあれこれ言われる存在です。往年の巨匠R.D.バーマンよりも自分の方がヒット曲が多いと言い放って、インド歌謡界の至宝アシャ・ボスレを怒らせたりしていますから、まあ自業自得ですね。

 彼の根強いファンも多いのですが、アンチも多く、良くも悪くも話題になることが多い人です。多くのボリウッド音楽家たちが、映画優先の控えめな態度をとっている中にあって、自分色を濃厚に出しているところがその原因でしょう。本作品でも、デュエットはあるものの、全9曲を自分で歌っています。ですから、一般のインド映画音楽と違って、ヒメーシュのソロ・アルバムであると言ってしまえる内容です。

 映画は、恋人に謀殺された男が生まれ変わって復讐するという輪廻転生の国インドならではのストーリーです。インド人はこのお話が大好きです。自分が生まれ変わりだと自覚するきっかけが、この映画の主題となるメロディーなんですね。この作品はリメイクですが、このメロディーだけは全く同じものを使っています。

 よく言われるとおり、彼の歌声は鼻にかかっています。このことはインドでは大いにポイントらしい。良くないらしいんです。先生にならうと矯正されるのでしょうね。そこも彼の好悪を決める分かれ道のようです。そんな歌声で歌う歌は、イスラム神秘主義歌謡であるスーフィーの範疇により近い感覚を持っています。

 ビデオを見るととても暑苦しいのですが、こうしてCDで聴いていますと、スーフィーのクールさがほどよくミックスされて、ちょうどよい感じです。ミックスしなくてもラウンジっぽい雰囲気もあります。楽器の使い方もお手軽ですが、程よく品があって、達者な節回しが耳にひっかかりますから、全曲通して聴くとファンになりますよ。

 なお、このCDは初版なので、2枚組になっています。1枚は来日もした伝説のDJ、アクバル・サミによるクラブ・ラウンジ・ミックスになっています。これもなかなかよいです。さらに、以前ご紹介したトゥルシ・クマールに現代の2大歌姫、スニディ・チョーハンとスレヤ・ゴシャールといった女性ボーカル陣も参加していて、ポイントが高いです。

 時折、無性に聴きたくなることがあり、それが今日でした。寝不足の頭の中にぐりんぐりんと回っています。素敵な音楽だと思います。

Karzzzz / Himesh Reshammiya (2008)



輪廻転生のメロディーはこちらです。