$あれも聴きたいこれも聴きたい-Grand Funk Railroad 04
 私は今やとんとスポーツには縁がありませんが、中学時代は陸上部で長距離走をやっていました。特に目立つ成績はありませんが、毎日毎日練習に精を出しておりました。元気でした。どこにあれだけの元気があったのだろうと不思議なくらいです。

 クラブ活動を終えて帰宅すると、くたくたなはずなのに、むしろ興奮冷めやらず、大音量で「アメリカン・バンド」のドーナッツ盤を3回くらい一緒に歌いながら聴いて、さらに「うぉー」と叫んで友達と海に泳ぎに行ったりしていました。

 考えてみれば、最も幸せなロックの聴き方ではないでしょうか。もう二度とそんな風には聴けませんよね。中学生くらい、せいぜい高校生まででしょう。何でもいいわけではもちろんありません。そんな時にはハード・ロックじゃないとだめです。

 ハード・ロックの中でも、この「アメリカン・バンド」です。脳天気なエネルギーだけありあまっている中学生にぴったりです。私は本当に中学時代にこの曲と出会って幸せでした。ガキ向けのお馬鹿バンド、大いに結構です。大人向けの知性派ロックなんて糞食らえです。

 有名なイントロから、ワーッと演奏に入るところは鳥肌ものですし、お気楽でいながらメッセージになっていなくもない歌詞も素晴らしいです。ドン・ブリューワーのボーカルもこの上なくかっこいい。最初から最後まで一気に駆け抜けるパワーは圧倒的です。本当に大好き。

 グランド・ファンク・レイルロードは、デビュー当時からのプロデューサーだったテリー・ナイトと袂を分かった後、名前をグランド・ファンクと縮め、さらにキーボードのクレイグ・フロストを加えて4人組となって再出発しました。それが前作「不死鳥」でした。

 セルフ・プロデュースがしっくりこなかったのでしょう。続く本作品では、魔法使いトッド・ラングレンをプロデューサーに迎えました。それが見事に成功します。サウンドはグランド・ファンクの持ち味を生かしつつも、ずいぶんとカラフルでポップに変身しました。

 もっとも、ポップという言葉には違和感が少し残ります。1960年代型ハード・ロックから1970年代型ハード・ロックに確かにモデル・チェンジはしているのですが、単純にポップになったというと誤解を与えそうです。洗練されたということなのですが。

 何といってもタイトル曲です。グランド・ファンク初の全米1位を獲得、歌詞もあいまって今やアメリカン・ロックのスタンダードです。キャッチーでかつハード。グダグダのMVもいかにもアメリカ的ですし、アメリカ、アメリカした超名曲です。

 タイトル曲に引っ張られるようにして、アルバムも全米2位まで昇りました。タイトル曲を始め、ドン・ブリューワーのボーカルがよりフィーチャーされ、相変わらず哀愁を帯びたマーク・ファーナーとのダブル・リード・ボーカルがアルバムを引っ張ります。

 タイトル曲以外は、グランド・ファンク的な粘っこいサウンドで、時代を感じるオルガンの音と相まって、この時代の輝きがギラギラと伝わってきます。三つ子の魂百までじゃないですが、これは私のハード・ロック体験の原点です。もう百点満点。

Edited on 2018/10/8

We're An American Band / Grand Funk (1973 Capitol)