$あれも聴きたいこれも聴きたい-Grand Funk Railroad
 グランド・ファンク・レイルロードは、アメリカのハード・ロック界の原点です。このデビュー・アルバム発表と同じ月に、レッド・ツェッペリンのオープニング・アクトを務め、その大音量ハード・ロックが主役を食ってしまいます。以降、ツェッペリンは前座を起用しなくなったそうです。

 ただ、常に強調されるのは「大音量」というところです。ツェッペリンなどのブリティッシュ・ハード・ロック勢に比べて、音が大きい。意味合いとしては、よく言えば肉体派、悪く言えばバカということです。どうにも評論家受けはよくありませんでした。

 単純でバカな大音量のハード・ロック。わずか3人の若者からなるムキムキのロック。それの何が悪いんでしょう。まさにロックの原点です。とてつもなく素晴らしいことです。このバンドは中学生や高校生に人気でした。それも崇拝するのではなく、同じ地平で楽しむ。

 グランド・ファンクは、ストレートなロン毛のギタリスト、マーク・ファーナーと、ドラムのドン・ブリューワー、ベースのメル・サッチャーのトリオです。ロックとしては最小ユニットです。曲作りのクレジットを独占しているマークがリーダー格だと考えてよさそうです。

 マークのロン毛は注目を集めていました。当時の男の長髪は、今の若者と違って、基本的にむさくるしい、汚いものでした。ですから、さらさらストレートのロン毛は何だか変なんです。しかもむくつけき男ですし。ちょうど金八先生に感じた違和感です。

 それはさておき、このデビュー・アルバムはとてもストレートに不器用なロックを繰り広げてくれています。マーク・ファーナーのメロディーの癖は、たとえばテイラー・スウィフトなんかに近い。あえて遠そうな人をもってきましたが、まあカントリーっぽいということです。

 アレンジもブキブキですし、ごつごつした演奏が続きます。お世辞にもうまいとは言えない演奏ですけれども、それがゆえにとても親近感がわきます。上手なアマチュア・バンドにはこんな風な演奏はできないでしょう。無骨な「大音量」ロックです。

 このデビュー作の一押しは、そりゃあもう「ハートブレイカー」です。日本では殊更人気のある曲です。マークが高校生の時に初めて作曲した曲だと言います。日本ではザ・タイガースが演奏していましたし、井上陽水の名曲「傘がない」はこの曲を元にしています。

 哀愁漂うメロディーは、中学校の先輩たちも夢中になっていましたし、私も大好きです。大音量で聴きながら熱唱したものです。1960年代のアメリカのハード・ロックと言えば真っ先にこの曲が浮かびます。70年代の「ホテル・カリフォルニア」に匹敵します。私の中では。

 マーク・ファーナーはレコード契約時には21歳になっていなかったために、お母さんがサインをしたなんていうほのぼのした話が伝わっています。しかし、グランド・ファンクにはこうした話が良く似合う。本当に愛すべきバンドです。

 このアルバムはデビューにしてはよく売れました。しかもセカンド・アルバムの成功でさらに売れ、最終的にはゴールド・ディスクを獲得しています。何とも野暮ったいバンドですが、そこが魅力。なかなか特異なバンドです。

Edited on 2018/10/1

On Time / Grand Funk Railroad (1969 Capitol)