$あれも聴きたいこれも聴きたい-Bad Company
 年輩の方にはフリーの、やや若い方には新生クイーンの、女性週刊誌好きの人には奥さんが日本人だった、お笑い好きの人には志村けん似ということで記憶に残っているポール・ロジャースが在籍したスーパー・グループがバッド・カンパニーです。

 鮮烈なデビューでした。四人のバンド・メンバーのそれぞれが成功したグループに所属していたことから、スーパー・グループとして世間の期待を一身に集めていたバンドでしたが、結果的に期待にたがわぬといいますか、期待以上の大活躍となりました。

 これはバンド名を高らかに宣言した彼らのデビュー・アルバムです。見事に全米1位を獲得し、アメリカだけで500万枚を超える大ヒットを記録しました。先行してシングル・カットされた「キャント・ゲット・イナフ」もトップ10ヒットとなり、彼らの代表曲となりました。

 この曲、いい曲だとは思います。ただ、バッド・カンパニーはどんなバンドか、一曲で表わせと言われるとあまり選ばれない曲でしょう。フリー最大のヒット曲「オール・ライト・ナウ」が同じようにフリーを一言で表わす曲じゃないですから、これはポールの性なのかもしれませんね。

 バドカンのデビュー当時はまだ洋楽を聴き始めて間がない頃でしたが、音楽雑誌や、京都ローカルの洋楽TV番組「ポップス・イン・ピクチャー」での司会者のはしゃぎっぷりや、姉の同級生たちの騒ぎぶりに、何だか凄いバンドがデビューするんだなと思った記憶があります。

 発表されたアルバムは、期待にたがわぬ凄味を感じました。同時に、ブルースに根差したとてもシンプルなロックは、中学生には少しとっつきにくいものでした。しかし、時を経るにしたがって、私にも彼らの魅力が良く分かるようになり、結局、今でも大好きです。

 全8曲。35分に満たない短いアルバムです。しかし、この中から、シングル・ヒットした前述の「キャント・ゲット・イナフ」と「ムーヴィン・オン」の他、「ロック・ステディー」、「レディ・フォー・ラヴ」、「バッド・カンパニー」の5曲は今でもアメリカではラジオでよくかかるクラシックです。

 「レディ・フォー・ラヴ」はバンド・メンバーの一人ギターのミック・ラルフスが在籍したモット・ザ・フープルの曲ですが、これこそが最もバッド・カンパニーらしい名曲だと思います。無骨なリズムと土性骨の座ったポール・ロジャースの歌。涙が出そうになるくらいかっこいいです。

 私がポールの生歌を聴いたのは、横浜アリーナで行われたクイーンの再結成コンサートでした。全く違う個性のフレディ・マーキュリーの歌を歌うということでいぶかしく思っていたのですが、見事に自家薬籠中の物にしていて、その力量に圧倒されました。凄い人です。

 ポールと同じくフリーからやってきたドラムのサイモン・カークは、「バッド・カンパニーというのは、フリーで感じるようになったプレッシャーや苦悩から救ってくれるものだったな。皮肉みたいだけど、自由を感じたよ。」と語っています。

 それぞれの活動に不自由を感じていたメンバーにとっては、「文字通り『夢の実現』だった」わけです。そんなバンドの雰囲気が、音楽に集中することを可能にして、シンプルでとても力強い作品を作り出したのだと思います。素晴らしいアルバムです。

*2012年6月30日の記事を書き直しました。

Bad Company / Bad Company (1974 Swan Song)



Songs:
01. Can't Get Enough
02. Rock Steady
03. Ready For Love
04. Don't Let Me Down
05. Bad Company
06. The Way I Choose
07. Movin' On
08. Seagull

Personnel:
Paul Rodgers : vocal, piano, guitar
Mick Ralphs : guitar, keyboards
Boz Burrell : bass
Simon Kirke : drums
***
Mel Collins : sax
Sue and Sunny : chorus