$あれも聴きたいこれも聴きたい-オレスカバンド 大学生の頃、平日の昼下がり、本を読みながら地下鉄に乗り込もうとした時に、ホームと車両との隙間に片足がずぼっとはまってしまいました。幸い、すぐに抜けたのですが、コントのような間抜けな姿をさらしてしまいました。

 運悪く、その時、がらがらの車両には学校帰りの女子高生の集団が20人ほど乗っていました。いたたまれなくなり、そそくさと隣の車両に移動してドアを閉めた瞬間、ドア越しに大爆笑が聞こえてきました。女子高生の集団、最強ですね。

 オレスカバンドは、2006年に高校3年生でメジャー・デビューした女の子6人組のバンドで、このアルバムは2007年に発表されたデビュー・アルバムです。正式名称は、「オレたちカスカスアメリキャンローソンスカバンド…withカッターシャツ」だということになっていますが、ぱっと見たところ、公式サイトには記載はありません。若気の至りかな?

 彼女たちは大阪の堺市出身。中学校のブラバン部を中心に結成されたという仲良し6人組です。ブックレットの集合写真が凄い。笑顔にあふれる写真ではないというか、むしろ誰一人笑っていないのですが、とにかくはちきれんばかりに健康的な女子高生6人のポートレート。ソフトボール部?っていう感じのエネルギーに満ち溢れた姿です。卒業後の写真でしょうけど。

 音楽はスカを基盤としたロック。スカは明るいパンクですね。高速スカはとにかく若い衝動をぶつけるにはもってこいのフォーマットだと思います。彼女たちのバンド編成は、ドラムにベースとギター、それにスカですから、ホーン・セクションとしてトランペット、サックス、トロンボーンの3人が加わります。

 高校生のお遊びだったのかもしれませんが、演奏はその域を超えていて、けっしてヘタウマだとか、勢いだけで押し切るバンドではありません。とてもしっかりした演奏で、気分が高揚する、若さあふれるホーンのノリは素晴らしいですし、それを支えるリズム部隊もなかなかのものです。

 彼女たちは、本場アメリカで人気を博していて、このアルバム発表前にすでにテキサスで海外ライブを行っていますし、全米でもアルバムをリリース、さらに翌年には全米でも最大級のパンク・ロック・フェスに全米46都市全公演にフル出場するというもてっぷり。子どもに厳しい米国でこれですから、大したもんです。

 このアルバムは、全部で13曲にシークレット・トラック入り。生きのいいスカロックが並びます。中にはヘビーなロックっぽい曲もありますし、バラードっぽい曲もあり、飽きさせないつくりになっています。実力派ですね。何曲か英語で歌っている曲もありますが、基本は日本語で女子高生らしい歌詞ですね。

 ホーンのアレンジにどうしても目が向いてしまいますが、リズムやギターの音にも神経が行き届いています。「忘れもの」なんてなかなかいいですね。決して楽しいだけじゃない本格的なバンドなんですよ。

 ただ、全く不満がないわけではありません。私は、ニュースで彼女たちのライブ映像をちょっとだけ見て、その溌剌とした音に感動して、このアルバムを買ったのですが、その勢いを十分には捕えられていないのではないかと思います。多分、ボーカルがよそよそしい。カラオケを歌ってるような感じなので、ライブで録音した方がよかったんじゃないかと思います。インスト曲での掛け声のようなボーカルや英語詞のハチャメチャなボーカルは結構イケてますので。

 まあ無粋なことは言わないで、明るいエネルギーに満ち溢れた天下のスカを思う存分楽しみましょう。彼女たちは現在もバリバリ活躍しているようなので、ライブを見に行きたいですね。

WAO!! / オレスカバンド (2007)