$あれも聴きたいこれも聴きたい-Tedeschi Trucks Band 2 これほど待ち遠しいアルバムがあったでしょうか。2月の来日公演が本当に凄かったテデスキ・トラックス・バンドのライブ・アルバムが発売されました。

 あまり考えずに輸入盤を買ってしまいましたら、何と日本盤はボーナス・トラックにスライ&ザ・ファミリー・ストーンのメドレーが収録されているではありませんか。普通はボートラ嫌いなんですが、ライブとなると話は別です。いきなり悔やまれます。知らなきゃよかった。

 ネガティブな入りで申し訳ありません。しかし、このアルバムは本当に素晴らしいですよ。もちろんスタジオ盤もいいのですが、彼らの真骨頂はライブだということを実感させてくれます。演歌歌手のようなものです。音がどんどん熟成されていく感じです。

 楽曲は、輸入盤なので全11曲。スタジオ盤の傑作「レヴェレイター」から4曲、未収録のオリジナルが1曲、カバーが6曲の構成です。ライブならではの遊び心も満載で、名曲「ミッドナイト・イン・ハーレム」では、デュエイン・オールマンの「リトル・マーサ」が出てきます。他にもいろいろと「あれっ」と思う瞬間があるのですが、歳のせいで題名が出てきません。

 バンドは総勢11名の大所帯です。ツイン・ドラムにサックス、トランペット、トロンボーンの管楽器隊、ベースにキーボード、コーラス2人にテデスキとトラックス。二人のソロだけではなくて、結構、皆のソロがフィーチャーされています。スティービー・ワンダーの「アップタイト」のホーン・セクションなどカッコいいです。それにオルガンがいいですね。ファンキーです。

 このバンドは何なんでしょう。徹底的に気持ちのよいグルーヴを醸し出します。聴いていて幸せになります。特にトラックスのギターは凄い。音はもちろん素晴らしいのですが、音と音の隙間がまた素晴らしい。「ギターに羽が生えたよう」と形容する人もいます。来日公演の興奮を思い出しました。

 11曲のうち7曲が10分を超えているのですが、時間の長さは全く気になりません。濃密な時間が詰まっています。日本盤のボートラもあわせて20分あるそうですね。ぶつぶつ...。

 2011年10月の3つの公演から選りすぐられている選曲です。しかし、ラストに向けて盛り上がっていき、最後にアンコール曲、というような構成ではありません。MCもなく、アルバムは結構しっとりとしたサム・クックの「ウェイド・イン・ザ・ウォーター」で、わざとらしい派手な盛り上がりはなく、余韻を残して堅実に終わります。質実剛健。

 前作はグラミー賞でベスト・ブルース・アルバム賞を獲得しました。ブルースの世界では今や押しも押されもせぬスーパースターですね。オールマン・ブラザーズ・バンドの伝統を引き継いで、現代にブルースを蘇らせた功績はとても大きいです。

 まあ、ごちゃごちゃ言ってないで、しばらくはこのアルバムに浸っていたいと思います。また来日しないかしら。

 ところでジャケットの写真は何なんでしょう。芸能週刊誌的に言うと、夫婦の危機を感じさせますよね。わざわざ背を向けた写真を使わなくても。他の写真も目を合わせていません。まあ大丈夫ですか。大きなお世話ですね。

Everybody's Talkin' / Tedeschi Trucks Band (2012)